(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らす子どもや孫との交流を、老後の楽しみにしている人もいるでしょう。帰省のたびに食事を用意し、孫の成長を見守る時間は、祖父母にとって大切なものです。しかし、親が思い描く家族の付き合い方と、子ども世帯が望む距離感が一致するとは限りません。何気ない言葉や長年の習慣が積み重なり、親子の関係が変わってしまうこともあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「いつか戻ってくるだろう」長男一家のために残していた部屋

74歳の信一さん(仮名)は、同い年の妻・和代さん(仮名)と地方都市の一戸建てで暮らしています。夫婦の年金収入は月約20万円。住宅ローンは完済しており、貯蓄も約1,500万円あります。

 

築40年の自宅は4LDK。長男と長女が独立してからは、使わない部屋が増えました。

 

それでも信一さんは、長男が使っていた2階の部屋をほとんど片づけずに残していました。

 

「孫が大きくなったら、泊まりに来ることも増えるだろうと思っていたんです」

 

長男の健太さん(46歳・仮名)は、妻と小学5年生の息子、小学2年生の娘との4人暮らし。実家から車で約2時間の場所に住んでいます。

 

以前は年末年始や夏休みに帰省し、孫たちも庭で遊んだり、祖父母と買い物に出かけたりしていました。

 

ところがここ2年ほどは帰省が減り、昨年の正月も顔を見せませんでした。信一さんは寂しさを感じ、健太さんに電話する機会が増えました。

 

「今年の夏は帰ってこられるのか?」

 

「子どもの予定があるから、まだわからないよ」

 

そんなやり取りを繰り返すうちに、信一さんは長男一家の暮らしにも口を出すようになります。

 

「そんなに習い事をさせなくてもいいだろう」「子どもは田舎で遊ばせたほうがいい」

 

さらに、築40年の自宅についても話を持ちかけました。

 

「いずれこっちに戻ってくるなら、家を直しておこうと思うんだ。お前たちが住むことも考えてな」

 

健太さんは、そのたびに「今は考えていない」と答えていました。しかし信一さんは、将来は気持ちが変わるかもしれないと考えていたのです。

 

転機となったのは、今年の夏休みでした。

 

久しぶりに帰省した健太さん一家を前に、信一さんは孫たちへ「大きくなったら、この家に住んでもいいんだぞ」と話しかけました。

 

すると健太さんが、少し強い口調で言いました。

 

「父さん、その話はもうやめてくれないか」

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