日本人のほとんどの人は「一生住み続ける」ことを前提に家やマンションを買っている。そのために何千万円というお金を金融機関から借りているる。しかし、じつはほとんどの分譲マンションは、廃墟化への時限爆弾を抱えているという。マンションの廃墟化を防ぐ手立ては何か。本連載は榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)の一部を抜粋し、再編集したものです

リゾートマンションの資産価値はゼロの現実

5000万円がゼロ円になってしまった

 

それで、現状はどうなっているのか。かなり悲惨である。

 

榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)
榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)

まず、そういったリゾートマンションの資産価値は、ほぼゼロと考えていい。10万円で売り出されている物件も多数あるが、成約事例が多いとは思えない。

 

このエリアのマンション売買は、H不動産というリゾート専門の大手仲介会社が、そのほとんどの取引にかかわっているはずだが、取引に関するデータを一切公表していない。またメディアの取材も受けつけない。

 

一方、競売案件を調べてみると、多くの物件が備忘価格になっている。備忘価格とは実質ゼロ円なのだが、帳簿上ゼロ円だと存在しないものとされるので、形だけ価格をつけておく、というもの。競売開始額が1万円とか5万円に設定されているのだ。つまり、裁判所も、湯沢町の多くのリゾートマンションは実質ゼロ円だと見做しているのだ。

 

かつては3000万円から5000万円以上で販売されたリゾートマンションが、今やその価値がゼロ円だと見做されている。これは日本の分譲マンションの歴史における、かなり衝撃的な出来事ではなかろうか。

 

現代の姥捨て山になっている?

 

そういった湯沢町のリゾートマンションを訪ねてみると、少々驚かされることがある。

 

まず、多少老朽化したとはいえ、設備が立派である。特に、温泉大浴場は一流の温泉旅館並みと思える物件も多い。タワータイプのリゾートマンションのなかには、豪華絢爛な展望大浴場もある。もっとも、つねに新鮮なお湯が供給される「源泉かけ流し」になっているところはほとんどない。見たかぎり、すべてがお湯を使いまわす「循環ろ過」式だった。

 

あるリゾートマンションでは、理事たちは絶対にお湯に浸からないと聞いたことがある。そこで湯船にたたえられているお湯がどういうものか知っていると、「とても浸かりたいとは思えない」のだそうだ。

 

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すべてのマンションは廃墟になる

すべてのマンションは廃墟になる

榊 淳司

イースト新書

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限界のタワーマンション

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榊 淳司

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