火災現場では、燃え煤のなかに様々な物質が含まれています。燃えた際の温度や材料によって含有物は変わるため、入室の際は細心の注意が必要になります。本記事では、ダイヤモンドプリンセス号の除染作業に従事した、特殊清掃のプロ集団である「特掃隊」の連載「HOW TO コラム」より一部を抜粋し、火災現場の健康被害について解説します。

火災現場は「アスベスト・ダイオキシン」の宝庫

火災現場は人体に非常に有毒な物質が多く含まれています。911テロ事件では火災現場の瓦礫による健康被害で作業者などにNY市から520億円もの賠償が成立しました。それほど危険な現場になります。建物のなかの物を出す際などは専門業者にご相談ください。

 

煙の成分の大半は炭素、すなわち煤(すす)です。ただの煤ならば生体へ及ぼす影響は軽微(炭素は自然界に豊富に存在する)ですが、燃焼物に含まれる窒素や硫黄、銅や亜鉛といった金属も含まれた煙の場合、場合によっては非常に毒性の強い煙が出ることもあるので注意が必要です。

 

毒性の強い煙が出ることも…(画像はイメージです/PIXTA)
毒性の強い煙が出ることも…(画像はイメージです/PIXTA)

 

また、火災現場乾燥後のアスベスト問題はさらに深刻です。

アスベストが使われているのは、どんな場所なのか

アスベストの多く使用されている箇所、場所に見当が付いていると、いたずらに警戒する必要がなくなります。特に石綿(アス)の含有が見込まれる(疑われる)箇所を提示しますと、

 

(A)3階建て以上の鉄骨構造の柱、梁。
(B)床面積の合計が200平方m以上の鉄骨建造物の柱、梁。
(C)ビルのボイラー室等の天井と壁。
(D)体育館・講堂・温泉・工場・学校、水回りや人が多く集まる場所。
(E)個人宅であれば、古いお風呂場や台所。

 

アスベストは防音・防湿・防カビ・防火・保温・保冷と、健康被害を度外視すれば大変便利な万能建材です。ですから「湿気が強い」「大きな音が出る」「火事になりやすい」「保温・保冷したい」場所や部材にアスベスト材は使用されています。

 

人が多く集まる場所は湿度が高くなりやすく騒音も出やすい。小学校、公⺠館などにも使用されている可能性があります。

 

では具体的にどのような部材なのかというと、(A)にある柱や梁の場合ですと鉄骨材の周囲に「耐火被覆」というフワフワした吹き付け材料が使われており、これらが代表的な例です。

どうして発症するのかは、未だ不明だが…

アスベストが原因の病気としては主に石綿肺・肺癌・中皮種等が有名です。石綿粉塵を吸入する事により発症します。

 

医学的にまだ「ハッキリしたことは分からない」ようですが、当社では「人によっては微量の吸入で発症する事もありますが、基本的には大量に吸入することによって発症の確率が高まります」と「アスベストの吸入総量」が発症原因としての可能性が高いと伝えています。

 

欧米の疫学研究では、低濃度ばく露(ばくろ)でもアスベスト関連の疾病リスクがあることや、喫煙との相互作用などがあると報告されています。

 

※アスベストばく露:アスベストの粉塵に晒されている状態を指します。

 

アスベストは病気の発症まで潜伏期間が⻑いのが特徴で、特に喫煙者の肺ガン発症率は「非アス・非喫煙」の人と比べ53倍も高くなるのだと、筆者が受講したアスベスト講習で教わりました。

 

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