毎年恒例、幻冬舎ゴールドオンラインの相続特集が開幕! 本連載では岡野雄志税理士が相続トラブル事例について解説していきます。今回は、ひょんなことから富豪一家の別荘を相続したラーメン店主の事例。 ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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商売上手ではないラーメン店主に、まさかのお願いが

■資産家の養子となり別荘を手にした幸運の主

 

今回は筆者の友人の事例を紹介します。Aさんは、観光地・温泉場として全国に知られる地域で、亡くなった両親から受け継いだラーメン店を営んでいました。「昭和レトロ」といえば聞こえはいいですが、店舗はお世辞にも立派とはいえません。

 

おまけにAさん自身は商売上手でもなく、親しくする数少ない常連客が来店すると、暖簾を引っ込め、メニューにはない肴をふるまってしまう、そんな男です。

 

店舗近くの別荘に住むCさん夫妻も、そうしたお人好しのAさんと懐かしい味わいのラーメンを愛する常連客でした。

 

ほどなくCさんのご主人が他界され、お子さんのいないC夫人を心配したAさんが食事の支度を手伝ったり、車で買い物の送り迎えをしたりと、生活のサポートをするようになりました。Aさんも天涯孤独でしたから、C夫人に母親の面影を見たのかもしれません。

 

そんな交流が何年か続き、C夫人もAさんが息子のように思えてきたのでしょう。自分の養子にならないかと、Aさんに要望しました。しかし、彼は承知しませんでした。遠慮したというより、亡くなった実親への愛着があったからだと、友人としては想像します。

 

やがて、C夫人も病を患ってしまいます。病院の送り迎えをするたびに、「このまま自分は家族に看取られることなく最期を迎えるのだ」と嘆く夫人に、ついにAさんも折れ、養子縁組を承諾しました。

 

迷ってはいたけど、ついに…(※写真はイメージです/PIXTA)
迷ってはいたけど、ついに…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

養子縁組には、「特別養子縁組」と「普通養子縁組」の2種類があります。「特別養子縁組」は従前までの親子関係をすべて断ち、新たな親子関係を創設するもので、家庭裁判所の審判を要します。C夫人とAさんが選択したのは、実親との親子関係も継続できる「普通養子縁組」でした。養子の戸籍にも、養親と並んで実親の名前が記載されます。

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