(写真はイメージです/PIXTA)

岸田内閣肝いりの「資産所得倍増プラン」。すでに十分な貯えがある富裕層にとっては有益な政策なのでしょうか? 岡野相続税理士法人の代表社員、岡野雄志税理士がわかりやすく解説します。

65歳・会社経営者にとっての「資産所得倍増プラン」

「いまさら、老後資産を増やそう! 投資で所得を倍増させよう! なんていわれてもね……」そうおっしゃるのは、Aさん(65歳)。20代で会社を設立し、40余年間、労を惜しまず働き続け、そろそろ経営を次世代に引き継いで、生前贈与を行いたいとご相談にみえました。

 

Aさんが言及しているのは、2022年5月上旬、岸田首相が英国金融街シティの講演で突然打ち出した「資産所得倍増プラン」のことです。さらに、同年5月末、「新しい資本主義実現会議」で、首相は年末には総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する方針を表明しました。

 

これを受け、同年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)が閣議決定。基本方針書には「資産所得倍増プラン」について以下のように記されています。

 

「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」

 

我が国の個人金融資産2,000兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されている。投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める。これらを含めて、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する。その際、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとともに、家計がより適切に金融商品の選択を行えるよう、将来受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールも活用した情報提供の充実や金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備を図る。

 

日本銀行調査統計局「2022年第2四半期の資金循環」によると、家計の金融資産残高は約2,000兆円で、このうちの約半分の1,100兆円超が現金・預金となっています。この1,100兆円超を「貯蓄から投資へ」転換させるのが、「資産所得倍増プラン」の意図するところです。

 

NISAの恒久化やiDeCoの加入年齢引き上げに加え、株式等の保有者に対する優遇税制なども検討予定とされています。しかし、むしろ投資を行える層と行えない層との格差を広げることになり、資金的余裕のある富裕層や高齢者優遇ではないかとの声もあがっています。 確かに、総務省統計局「家計調査報告~世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況(2021年)」によると、2人以上の世帯については世帯主50歳以上で貯蓄現在高が負債現在高を上回ります。

 

 ※出典:総務省統計局「家計調査報告~世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況」
[図表]世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高、負債保有世帯の割合(2人以上の世帯)-2021年- ※出典:総務省統計局「家計調査報告~世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況」

 

また、日本証券業協会の「個人株主の動向について(2022年9月21日)」によると、個人株主(1,232万人)の人口に占める年齢階層別の割合をみると、60歳以上70歳未満(14.9%)が最も高くなっているとのことです。

 

とはいえ、Aさんのように、すでに「逃げ切って」「守りに入っている」「勝ち組」の富裕層が老後を目前にして、いまさら安定的な貯蓄からリスクのある投資へと動くでしょうか? 

 

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