『鬼滅の刃』炭治郎のように真に家族を思うなら
言われるまでもなくご存じとは思いますが、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』がメガヒットとなっています。映画界だけでなく、新型コロナウイルス感染症の拡大で委縮してしまった日本の経済へ、久々に明るいニュースをもたらしてくれました。
精緻かつ大胆なアニメ映像の魅力はもとより、「儚いがゆえにたくましい人間の生とその先に必ずある死」「家族への想い」を託したストーリーとキャラクターに共感された方も多いことでしょう。何を隠そう、筆者もその一人です。
相続税専門税理士という職業柄、亡くなった被相続人の人生やご遺志に触れることが多いというのも理由に挙げられます。もちろん仕事ですから、淡々と確実に税務をこなすことが第一の使命なのですが、円満相続のためには被相続人や相続人の想いに耳を傾けることも重要です。
税務に携わるようになって20年弱、これまで2,000人近い相続人のご要望を伺ってきました。家族や親族同士の関係は、ひとつとして同じ例はなく、実にさまざまだということを実感せずにはいられません。
しかし、ひとつだけ共通していることがあります。
それは、自分の死後も大切な家族が揉めないことを望むのであれば、遺言書は作成しておいたほうが良いということです。規定通りの自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が通れば、法定相続分より優先されるからです。
ただし、自分の手で規定通りに遺言書を書いておけば、それで良いというものでもありません。せっかく作成した自筆証書遺言も、遺族がその存在を知らなければ何の意味も持たず、遺言書に込めた家族への想いや願いも無に帰してしまうからです。
次項より、実際に筆者が体験した「無念すぎる相続」を紹介します。
■激しい争族の後、自筆証書遺言を発見した家族は…
自筆証書遺言を作成しておいたほうが良いと頭ではわかっていても、なかなかペンを取る決心がつかないという方も多いでしょう。最期の時はいつやって来るか、誰にもわかりません。病を得てから決心しても、思うように作成できないこともあります。
また、自分がいずれ死の時を迎えるということ自体、考えるのを嫌悪される方もいらっしゃいます。そういう人に対して、家族から「遺言書を作ってくれ」とはなかなか言い出せないものです。Bさんも、そんなお一人でした。