不動産投資でいちばん怖いのは「居住戸数の供給過多」
物件価格や入居率の下落に影響する要因として、人口の減少を挙げる人も多いでしょう。ところが、東京ではまだ人口は増加していますし、都心近郊であれば何年か先に減少する予想はあるものの、急激なカーブを描くものではありません。
需要と供給の関係から考えた場合、人口の増減に関連して投資家として気にしておかなければならない要因がもう1つあります。それは、居住戸数の増加です。
東京23区でもさらに中心地となると、土地の確保が難しく、居住戸数を大幅に増やすこと自体が困難です。そのため注意が必要なのは、ある程度人口があって、かつ空いている土地がまだある地域です。
そういう場所に学校とか工場が建設された場合、その近郊は居住条件の良さから不動産販売業者、不動産投資家がいっせいに舵を切ってしまうケースがあるのです。
人口の自然な減少はゆっくりと進みます。ですが、アパートやマンション建設の場合は2〜3年の間に急激に進み、のんびりとした都心郊外の地域でも、数年のうちにアパートやマンションが供給過多となってしまうのです。
そこで、学校や工場の移転や閉鎖が起きたら、どうなるでしょうか。そのような可能性のある地域で不動産投資を進めるのであれば、その地域と運命をともにする覚悟が必要です。
最近では、相続税の課税見直しに節税で対応しようと考える人も増えています。金利が歴史的に低い状況であることと相まって、アパートやマンションの建設スピードにさらに拍車をかけています。その状況は、要注意な地域が増えていると言うこともできます。
投資家は家賃の下落に耐えられるか
家賃は継続入居している間は、基本的に見直されないことが多いでしょう。そのため、景気の減速より、おおよそ3年ほど遅れて下がり始めます。今後、そういった居住戸数が供給過多である地域では、家賃の値下げ競争が始まるのではないかと考えています。
東京の近郊で一例を挙げると、横浜市内で最寄駅から10分以内といった地域です。一見、条件の良さそうに見える地域において、築20年未満のアパートが家賃3万5000円を切る値段で賃貸物件の検索にヒットする状態に、その危険性を感じます。
家賃が下落したとき、その物件を所有する不動産投資家の収益性はいっぺんに悪化します。収益性はアパート・マンションの1棟に投資していても1室に投資していても、同じように悪化します。
この状況に、不動産投資家が耐えられるでしょうか。これから投資する人は、自分のこととして熟慮する必要があります。
ここで考えられる教訓は、次のようなものです。
★ㅡ購入希望物件付近の家賃相場は、インターネットの賃貸物件サイトですぐ調べられる。
★ㅡ賃料相場と想定賃料の乖離(かいり)が大きく、その理由が明確でなければ、購入を見合わせる。
★ㅡ単一の学校や工場に頼りきった需要は危険性が高い。
台場 史貞
不動産投資家