長きに割った継続していた「真っ当ではない融資」
S銀行では、本来なら自行の融資基準を満たさないケースでも、審査部門に提出する書類を基準に見合うように改ざん・偽装して、融資を承認させるなどの不正が行われていました。
本来、不動産投資は2割程度の頭金を入れないと、健全な運用はできません。それを販売会社の書類偽装と相まって、頭金なしで1億円も融資するような、真っ当な状態では考えにくい融資が長きにわたって行われてきたのです。
投資家にとっては、最終的にそれが成功すれば、「ごまかしてまで、高額な融資を引き出してくれてありがとう」と感謝することになったのでしょう。
ところが、赤字が続いて不動産投資の収支が破綻すると、「販売会社の偽装が悪い、銀行の融資基準改ざんが悪い」と言い出す人もいます。私には、それは虫がよすぎるような気がします。
問題のシェアハウスは、空室が増えるのは当然だった
融資基準という安全弁が適正に機能しなかったことが、この投資のリスクを高める要因にはなったでしょう。しかし、このスキームが成立すると最終的に判断したのは、ほかでもない投資家自身です。
過去に問題になったシェアハウスについて言えば、そのスキームが成立しないのは、少しでも不動産投資をかじったことのある人であれば一目瞭然です。このシェアハウスについて言えば、賃料収入が高いため、内容も深く確認しないまま業者に丸投げした結果がもたらした悲劇としか言いようがありません。
問題となったシェアハウスにおいては、実は次のように不動産投資としてのメリットが皆無でした。そのため、空室が増えるのは当たり前だったのです。
●女性専用であること(募集入居者を入り口で2分の1に狭めている)
●東京中心地の好立地には金額的に立てられず、東京周辺のドーナツ状の場所に建てられている
●1つひとつの部屋が狭すぎる→7〜9平方メートルで、一般的な中古ワンルームの約半分しかない
●7〜9平方メートルの狭さなのに、家賃は都心の安めのワンルームと変わらない
●キッチンやトイレ、バスが個々の部屋にはなく共同である
●部屋の数を増やさないとローンが返済できないためか、シェアハウスの最大のメリットである入居者が集まる共同のリビングもない
このように不動産投資のメリットのないシェアハウスに投資しても、収支は成り立ちません。その成立しないスキームの発覚が遅れたのは、販売会社が初期に建築したときに発生する利益を、既存のシェアハウスのサブリース代金に充当していたからです。まさに、販売会社が最初から自転車操業だったのです。
その販売会社はS銀行からの融資が厳しくなると新規物件が立てられないことになり、サブリース代金が支払えず破綻しました。
教訓としては、次のことが言えます。
★ㅡ最低限の知識は身につけ、業者に丸投げせず、自分の目で確かめる習慣が必要である。