「これで少しは安心できる」長男が決めたサ高住入居
会社員として働く雅彦さん(仮名・56歳)は、母・光子さん(仮名・82歳)の住まいをどうするか、ここ数年ずっと悩んでいました。
光子さんは夫を亡くしたあと、一人暮らしを続けてきました。大きな認知症の診断はなかったものの、足腰が弱り、転倒も一度や二度ではありませんでした。冷蔵庫に同じ食材が重なって入っていたり、通院日をうっかり忘れたりすることも増えていたといいます。
「まだ一人で暮らしたい気持ちは強かったんですが、このままでは危ないとも感じていました。夜中に転んでいたらと思うと、こちらも落ち着かなくて」
雅彦さんには妹もいましたが、遠方に住んでおり、日常的な対応はほぼ雅彦さんが担っていました。仕事の合間に実家へ寄り、食料品の補充や通院の付き添いをする生活が続いていました。
「母は“まだ大丈夫”の一点張りでした。でも、私のほうが限界に近かったのかもしれません」
そうして見つけたのが、自宅から電車で通える範囲にあるサ高住でした。バリアフリーで、安否確認と生活相談のサービスがあり、必要に応じて介護保険サービスも外部事業者と契約できる。雅彦さんにとっては、「施設」というより“見守りつきの住まい”として、最も受け入れやすい選択肢に見えたといいます。サ高住は、高齢者住まい法に基づく登録制度で、原則25㎡以上の床面積やバリアフリー、安否確認・生活相談サービスなどの基準が定められています。
見学の日、光子さんは終始不機嫌でした。
「ここに入ったら、もう家には戻れないんでしょう」
そう言われたとき、雅彦さんは返す言葉に詰まったそうです。
「“そんなことないよ”とは言いましたけど、実際には戻る前提ではなかったので……。母もそれを感じていたんだと思います」
それでも、転倒リスクや今後の暮らしを考え、最終的に入居を決めました。入居直後の数日は、光子さんも比較的落ち着いていたといいます。食事は出るし、掃除も行き届いている。スタッフも親切で、息子としては「これで少しは安心できる」と感じていました。
だが、その“安心”は長く続きませんでした。
