売る側の状況や考え方、方法論を知ることは有益だ
購入希望者の「買いたい」気持ちにどう火をつけるか
(2)のタイミングについては、売却までの期間はもちろんのこと、価格にも大きく影響するので重要だ。チェックするポイントは融資の環境だ。特にアパートや賃貸マンションなどの集合住宅になると、価格も高くなり、誰もが必ず融資を引けるわけではない。融資が厳しい状況では売りに出しても引き合い数は少ないだろう。
一方、区分マンションの場合はそれほど金額が高くないため、融資環境の影響を受けにくい。そのため、売るタイミングは景気がポイントとなる。日々の株価をチェックして、右肩上がりで推移している状況にあれば、景気が良くなり、不動産を購入する人が増えるという予測を立てることができる。景気の動向についてもチェックが必要だ。売るときにあまり焦ると足元を見られる。価格交渉で、なるべく値下げすることなく交渉に当たることができる余裕もポイントのようだ。
(3)の情報提供については、売却後のトラブルを防止するためにも重要だ。具体的には、購入希望者に、修繕履歴や付帯設備などの情報をもれなく伝えるように不動産会社に念押ししておく。
例えば、ある家主は太陽光発電パネルが設置されている賃貸住宅を売却したが、購入した新しい家主が接続を申し込んだところ、出力制御対応機器を設置しなければならない義務があることが判明。「そんな話は不動産会社から聞いていなかった」とクレームになり、その設置代を売却した家主が負担したという。この義務化は、前の家主が設置したときにはなく、後でできた制度だったのだ。こうした経験から、以降、建物に対して行った工事履歴や修繕記録など、物件に関する一つ一つの情報を詳細に購入希望者に伝えてもらうよう、不動産会社の担当者に徹底しているという。
売却については、以上のようなことが主なポイントとなる。
ただ収益不動産の場合、購入希望者がいても、結局はその購入希望者に融資が出るかどうかがカギを握る。スルガ銀行の不正発覚以降、融資環境が厳しくなっているため、実際、売買取引は成立しにくくなっている。不動産が高騰しているため、その傾向は強まっている。
しかし、それでも全く取引が成立しないわけではないし、不動産価格が下がれば、当然、買い手のハードルも下がる。売りやすくなる状況は、また訪れるだろう。読者の多くは、まず、これから不動産を購入しようという人が多いだろうが、売る側の状況や考え方、その方法論を知ることは、買う側にとっても有益なはずだ。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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