最近増加しているのが、生前に親を他のきょうだいと会わせないようにする「囲い込み」と、親の財産管理をしていた子どもの「使い込み」をめぐる相談です。さまざまな事例を踏まえて見ていきましょう。※本連載は、NPO法人長寿安心会・代表理事を務める住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

「父のカネを使い込んだのか!?」弟が問いただすと…

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【事例②】

父と兄が同居しており、父の死後、弟が父名義の預金通帳を見たところ、父が入院してから死亡するまでの間に毎日、ATMで限度額いっぱいに、総額1千万円近くの預金が引き出されていました。弟は、兄が勝手に引き出して使い込んだのではないかと思い、兄を問い詰めたところ、「親の面倒を見たのは俺だ。介護の苦労も知らないお前にそんなことを言われる筋合いはない」と言われて険悪な関係になってしまいました。

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同居する親族の「横領罪」は減免…原則は「内輪解決」

このような「使い込み」ケースは、疑わしいものも含め、非常に多いのです。資産を管理するうえでの取り決めが大切です。また、次のような対策が考えられます。

 

●入出金の記録や使途をメモし、領収書は保存する

●他のきょうだいからの問い合わせに誠実に答える

●大きな支出をする際には他のきょうだいにも相談する

●後見制度を利用して、家庭裁判所および専門家から選ばれた成年後見人や後見監督人に財産管理への関与をしてもらう

●後見人を選任して資産は後見制度支援信託を使う。裁判所の指示によらなければ払い戻しができない仕組みにする

●保護・管理者として一定の報酬を約束しておく

 

介護は金銭だけの問題ではありません。その苦労をねぎらい、ときには手伝うなどして共有することも大切です。

 

なお、同居している親族の間での「横領罪」は刑が免除されます。そもそもが家族内で解決すべき問題です。なお、遺産分割のときに使い込んだ金額を含めて最終調整することになるでしょうが、当事者同士で紛糾するおそれがある場合は、第三者を入れての解決を目指すことが望ましいでしょう。

 

<参考>

【刑法】257条(親族等の間の犯罪に関する特例)

第1項 配偶者との間、または直系血族、同居の親族、もしくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪(※窃盗、横領など)を犯した者は、その刑を免除する。

 

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住田 裕子

弁護士(第一東京弁護士会)

NPO法人長寿安心会 代表理事

 

 

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シニア六法

シニア六法

住田 裕子(監修、著)

KADOKAWA

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