透析患者がコロナ陽性で判明…日本の医療体制の「課題と限界」

東京大学を卒業した杉山宗志氏は、福島県いわき市を中心に展開する「ときわ会グループ」にて、病院の事務方として働いている。医療現場の現状に大きな注目が集まるなか、現場からの声を聞いた。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

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透析患者がコロナ罹患…関係者は「全員陰性」だったが

以前の記事『コロナ第2波感染防止が急がれるなか「FAXかつ手書き」の窮状』『3ヵ月ぶりコロナ発生のいわき市「保健所からの急な連絡」に…』で、筆者が携わっているコロナ対応の様子を紹介しました(関連記事参照)。今回も引き続き、このお話をしたいと思います。

 

筆者がお手伝いしている施設の役割は、状況に応じ、少しずつ変わってきています。以前は「帰国者・接触者外来」のみでしたが、現在は、地域の診療所などから紹介を受けた患者さんのPCR検査を行う「PCR専門検査センター」や、陽性者の濃厚接触者を対象に、行政指示による検査を行う機能も兼ねています。また、最低限ではありますが、透析装置や入院病床が設置されています。

 

実は先日、この施設で実施した検査で、透析患者さんがコロナ陽性と判明しました。陽性になった透析患者さんは、家族が陽性と判明し、その濃厚接触者として検査した方でした。いわき市で陽性者が発生すると、基本的にはいわき市唯一の感染症指定医療機関である医療センターに入院することになります。今回の患者さんも同様でした。

 

透析患者さんが陽性と判明すると、例によって、保健所により濃厚接触者の調査が行われました。10名ほどが濃厚接触者と判断されました。

 

透析患者さんは、基本的には週3回4時間以上、透析ができる医療機関に通わなければなりません。患者さん同士が、長い時間、近くのベッドで過ごすことになります。また、自宅と医療機関の間の送迎サービスを利用している患者さんも少なくありません。この患者さんも送迎サービスを利用しており、透析ベッドで隣り合っていた患者さんに加え、送迎車両に同乗していた患者さんも濃厚接触者ということになりました。介護度が高い患者さんで、介護施設も利用していましたが、こちらには濃厚接触者はいないという判断になりました。濃厚接触者には、行政指示により、PCR検査が行われました。

 

濃厚接触者以外にも、同じフロアで透析を受けていた患者さんや、そこに勤務していたスタッフ、また、介護施設の利用者やスタッフもPCR検査を行いました。病院や介護施設が自前で行ったものです。100名以上が検査を行い、結果的にはすべて陰性と判定されました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

陰性でも「自宅待機」必須…週3回の透析にどう対応?

ところが、「陰性で良かった」ということでは終わりませんでした。濃厚接触者は、陰性だった場合にも、2週間は自宅待機することとなっていますが、これが難しかったのです。

 

透析患者さんですから、間を開けることなく透析を継続しなければなりません。しかし、検査をする前と同じように、多くの患者さんと同じフロアで同じ時間に透析を行うことはできません。PCR検査の結果が陰性であっても、万が一のことを考え、分ける必要がありました。ここで、前述の検査センターが置かれる施設で、初めて透析設備が活用されることになったのです。

 

これまで、今回のような事態を想定したシミュレーションを行なってきており、初日は時間こそかかりましたが、問題なく透析を終了させることができました。現場のスタッフの力には驚くばかりです。ただ、この施設はコロナ関連以外では稼働しません。通常の診療がある中で、スタッフを確保するのは簡単ではありません。

 

課題になったことの一つに、透析患者さんの送迎をいかにこなすか、ということがあります。

 

10名弱の患者さんの中のほとんどが、もともと送迎サービスを利用していました。しかし、患者さん同士を同乗させるわけにはいかず、基本的には一人ずつの送迎になりました。

 

事前にコロナ対応用の車両も用意していたため、機動力はありました。人数分だけ往復することになったのですが、面積の広いいわき市ですから、毎回の送迎もかなりの距離があります。最初の患者さんのご自宅にお迎えに行ったのが8時頃、そこから断続的に送迎を続け、最後の患者さんをご自宅にお送りしたのは20時頃でした。週3回、誰かがこの送迎を行わなければなりません。車に乗るための介助を、感染対策を徹底しながらどうしていくか、ということも課題です。

 

また、家族に影響が及ぶことを心配し、自宅に帰らないようにしたいと考えるスタッフもいます。宿泊先の用意も課題です。

 

実際にこのような事例を目の前にし、事前に様々な状況を想定し準備しておく必要性を痛感しました。

重傷者が発生すれは「対処しきれない市町村」が…

今回の濃厚接触者の中には、介護施設を利用しているような患者さんはいませんでした。もしそのような患者さんがいたら、介護施設側のサービス提供の継続は難しいでしょう。自宅で過ごせるのであれば良いですが、そうとも限りません。

 

また、陽性者が発生すると、同時に「疑い患者」さんも発生します。しかし、陽性者と「疑い患者」さんは、同時に同じ病棟に入院させることはできません。透析患者さんの場合、どちらも、もともとの透析施設で透析を行うことはできなくなり、入院が必要ということであれば、コロナに対応でき、さらに透析装置が設置された、別々の病棟を使わなければならないのです。単体の医療機関で、そこまでの余裕があるところはないでしょう。

 

今回、結果的に陽性だったのは一人だけでしたが、透析患者さんの環境を考えると、多くが一気に陽性となりかねません。その場合、濃厚接触者は、さらに多くの数になるでしょう。重症者がいるようであれば、市町村のスケールでは対処しきれないかもしれません。透析患者さんは、特に「待ったなし」です。さらに綿密な準備に励みます。

 

 

杉山 宗志
ときわ会グループ

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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