3ヵ月ぶりコロナ発生のいわき市「保健所からの急な連絡」に…

東京大学を卒業した杉山宗志氏は、福島県いわき市を中心に展開する「ときわ会グループ」にて、病院の事務方として働いている。医療現場の現状に大きな注目が集まるなか、現場からの声を聞いた。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

3ヵ月ぶりにコロナ陽性者発生のいわき市…対応は?

コロナ第2波感染防止が急がれるなか「FAXかつ手書き」の窮状』で、筆者が携わっているコロナ対応の様子を紹介しました。今回はこれに引き続き、いわき市でのコロナ対応について解説します。

 

いわき市では8月5日に、16、17例目となる新型コロナウイルス感染症患者の発生が確認されました。5月3日に確認されて以来、約3ヵ月ぶりのことでした。

 

筆者もお手伝いしている帰国者・接触者外来は、月曜、木曜、土曜の開設として継続していました。陽性者が確認される前の検査数は8月1日(土)1名、3日(月)0名でしたが、6日(木)は11名になりました。そして同日、他施設の検査で、5日に判明した陽性者の濃厚接触者がPCR検査陽性であることが判明しました。

 

コロナ感染拡大は続く(※写真はイメージです/PIXTA)
コロナ感染拡大は続く(※写真はイメージです/PIXTA)

 

7日の午前中に、保健所から「濃厚接触者の検査のため、今日から来週月曜の10日まで、毎日40名くらいずつ検査できる体制を取れないか」との電話が入りました。陽性となったのはデイサービスを利用していた高齢者で、職員と利用者、全員の検査が行われることとなったのです。ここまでの件数は想定していませんでしたが引き受けることとし、さっそく手配をはじめました。ちなみに、保健所が濃厚接触者だと判断して行う検査は、帰国者・接触者外来とはまた別の行政検査となります。

 

7日の午前は、検査に対応できる人員の確保と、何時に何名の検査を誘導するかの調整に終始しました。とにかくまず医師を確保し、看護師、事務員の予定を組んでいきました。金曜や日曜はもともと開設する予定でなく、スタッフは検査対応のため、病院での通常業務を離れることになりました。人員さえ決まれば、あとは既存のフローで検査をすれば問題なさそうでした。

 

実際の現場は、案外、和気あいあいとしています。もちろん危機感がないわけではありません。現場のスタッフは肝が据わっているというか、「暑いー!!」などと、大騒ぎしながら積極的にコロナ対応にあたっています。東日本大震災を経験したというバックグラウンドがあるというのが、理由の1つかもしれません。

 

最終的に、デイサービス関係者以外の濃厚応接触者も合わせ、7日に37名、8日に45名、9日に44名、10日に7名の行政検査を行いました。

 

初めてこなす件数でしたので、多少の苦戦はありました。患者さんが施設に到着してからの案内を行いつつ、他の方からの「施設の場所がわからない」という電話に応え、さらに「保健所から届くFAXが読めない!」といったトラブルを対処するため、保健所とやりとりをする…という、てんやわんやな状況もありました。

 

また、暑い中、屋外でドライブスルー方式の検査をしていたため、看護師の体調には十分な注意が必要でした。適宜休憩を入れつつ、様々な暑さ対策グッズを試しながら進めました。バタバタとはしましたが、大きな問題なく終えることができました。結果的に、7日から10日に行った行政検査では陽性者は確認されませんでした。

「とりあえず」「一時的に」な対応にも変革のときが

今回の対応は、この検査を行う施設が、コロナ対応専用の施設として利用できていたため、滞りなくできたのだと思います。この施設は、諸事情によりそれまでの役割を終える予定になっていた、築5年程度しか経っていない建物です。当時、積極的な設備投資を行っていたようで、スペースや設備に恵まれた施設でした。

 

診療を行なっているわけでもないため、スタッフが揃いさえすれば、PCR検査を行うことができます。既存の診療を止めるわけにはいかない他の医療機関では、ここまでの身軽な対応は難しいかもしれません。

 

検査に限った話ではありません。筆者が勤務する病院でも、コロナにどのように対応するか試行錯誤を続けています。

 

これまでのところ、コロナの陽性者は院内では確認されていません。ただ、今まで運が良かったというだけで、どこかで陽性者が入ってしまう可能性は拭いきれません。無症状というだけかもしれず、見てわかるわけではないため、院内にコロナを100%入れないことはほとんど不可能だと考え、対策を検討しています。

 

入院は必要だけれどもコロナも疑わしいという患者さんがいた場合、検査結果が判明するまでは感染対策を行なった病室に入っていただくことになります。病室を準備するため図面と睨めっこをすることになります。

 

フロア全体の構成から動線を考えながら対策を進めます。トイレの位置や屋外からの動線を考えると特定のエリアしか活用できず、リネン庫や面談室は移動させることになりました。しかし、移動させるにしても、筆者が勤務する病院では、コロナに関係なくスペース不足に悩まされてきているため、そう簡単に場所は見つかりません。スタッフが使うエリアを縮小することでなんとか押し込むことになります。患者さんご家族への入院説明や手術説明の場所も十分ではありません。

 

以前は病棟含めしっかりと部屋を確保して説明を行うことができていましたが、現在は、患者さんご家族の病棟への立ち入りを原則禁止としていることもあり、エレベーター前のロビーを使っています。デリケートな話もするはずのエリアですが、話し声を十分遮断できず、周りに聞こえてしまうときもあります。来院する方々に、ご迷惑をおかけしてしまうこともあります。

 

コロナが落ち着くまで、「とりあえず」「一時的に」と思いながら様々な対策を講じてきていますが、コロナは今後ずっと続くものと考えるべきなのでしょう。一時的に凌ぐためだけの方策ではなく、長期的な視点で院内を有効活用できるよう、さらに試行錯誤は続きます。
 

 

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杉山 宗志

ときわ会グループ

 

ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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