コロナ第2波感染防止が急がれるなか「FAXかつ手書き」の窮状

東京大学を卒業した杉山宗志氏は、福島県いわき市を中心に展開する「ときわ会グループ」にて、病院の事務方として働いている。医療現場の現状に大きな注目が集まるなか、現場からの声を聞いた。

東京でコロナ感染者急増…いわきでも不安の声が広がる

福島県内での新型コロナウイルス感染者は、これまでで82人と発表されています(7月8日現在)。4月から5月初旬にかけては新規感染者数が多かったのですが、6月には1人、7月に入ってからは0人です。私が生活するいわき市では5月3日を最後に2ヵ月以上、感染は確認されていませんが、人の行き来が多い東京で再び感染者数が増加してきており、油断はできません。

 

この状況下、「帰国者・接触者外来」は粛々と続けられています。帰国者・接触者外来は風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く、倦怠感や息苦しさがあるといった症状を目安に帰国者・接触者相談センターに相談が入り、そこで新型コロナウイルス感染の疑いがあると判断された場合に受診する専門外来です。PCR検査が行われます。

 

私も、いわき市内で帰国者・接触者外来を開設している施設を事務方としてお手伝いさせていただいています。その施設は新型コロナウイルス感染症に係る対応のみしか行っていません。現在週3回の開設としており、月単位で見ると、4月や5月の半分程度の開設日数です。4月、5月には1日に5件以上を対応していましたが、現在は1日に2件程度で、0件ということもあります。

 

帰国者・接触者外来は、既存の診療、既存の業務を縮小することで成り立っています。帰国者・接触者外来を担った経験のある人がいるはずもなく、通常の外来診療とは大きく違うものを手探りで始めたので、今後増えてくことに備え、今のうちにスムーズに検査ができるように整理している段階です。今回は、事務方から見た現場の対応をお伝えします。

 

感染者数が再度増加し始めた。
感染者数が再度増加し始めた。

受信者情報が「手書き」「FAX」という実態…

帰国者・接触者外来の日には、その日の受診者情報が記載された「相談票」がFAXで送られてきます。氏名や住所などの基本情報とバイタルサインや症状の経過といった受診者の状況のほかに、渡航歴や感染者との接触歴などが記載されています。この情報をもとにこちらではカルテの準備などを行うのですが、手書きで細かい文字が記入されていることもあり、なおかつFAXであるため、字が読めないこともしばしばあります。全体としてのデータ活用を考えると、改善の余地は大いにある部分です。

 

受診者には、感染拡大防止のため、公共交通機関は利用せず、車で施設へ向かっていただきます。到着次第、電話が入ることになっており、その後は、車の中での待機となります。CT撮影がある場合以外、受診者ができる限り車に乗ったままで完結できるようにしています。案内など、事務スタッフが電話で行います。

 

準備が整うと、防護服を着た看護師が車まで行って、問診やPCR検査用の検体採取を行います。相談票には車のナンバーや車種を記載する欄があり、現場ではこの情報が案外大切です。間違いなく到着しているかの確認や看護師がどの車に向かえば良いのかを把握するためで、見つからない場合、探し回ることになってしまいます。

夏のコロナ対策…これまでと同じやり方では限界がある

問診や検体採取は屋外で行っており、天気に左右されます。雨の日は、玄関の庇の下まで車ごと誘導します。防護服を着ている看護師としては、すでに暑さとの戦いが始まっています。フェイスシールドも曇ります。これまでと同じやり方には限界がありそうです。

 

薬を処方する場合も、通常の外来とは違った対応をしています。院外処方ですが、感染が疑われている方に調剤薬局に行っていただくわけにはいきません。事務スタッフが代わりに近くの薬局へと薬を取りに行き、看護師から渡します。

 

検体の輸送も毎回必要です。その日のすべての診療が終わると、検体は保健所のスタッフによって検査委託業者へと運ばれます。行政検査であるということで、現在は保健所のスタッフが対応してくださっています。1つの検体の運搬だけで、1時間半程度はかかっていると思われます。

 

今となっては滞りなく終えることができるようになりましたが、はじめのうちはなかなかスムーズにはいきませんでした。各方面から人をかき集めて開設したので、施設の場所すら知らなかったというスタッフがほとんどです。

 

受診予定者から道に迷ったと問い合わせが入ってもうまく誘導できない、担当する医師が急遽変更になると連絡が入っても電子カルテの操作がわからずなかなか先に進まない、自動ドアの電源の入れ方もわからない、補充用のコピー用紙がどこにあるかもわからないといった状況で、施設をひっくり返すようにモノ探すこともよくありました。保健所から連絡が入ってもその先がうまく流れず、受診者が乗っていると思われる車は到着しているのに、相談表を誰が持っているかわからず確認できないといったこともありました。

 

先にも書いたとおり、帰国者・接触者外来をはじめ、新型コロナウイルス感染症に係る診療は、既存の診療・業務との調整の上で成り立っています。感染がさらに拡大した場合に備え、新型コロナウイルスに係る診療とそれまで行ってきた診療、どちらも効率を上げておかなければなりません。

 

医師が普段の診療にすぐに戻れるよう、帰国者・接触者外来の対応には最後に入り最初に退出できるような流れにはなってきています。「一人ですべてができる」ことと「一人ですべてを担う」ことは別と考え、特に医師が医師しかできない仕事に集中できるよう、チームのあり方を模索しています。

 

 

杉山 宗志

ときわ会グループ

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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