軽度認知障害の弟と認知症父が電話バトル
40年前の話でバトル?
それは、じーじの弟からの電話で始まった。最初は穏やかに話していたものの、途中から雲行きが怪しくなった。
「あなたの言っていることはおかしいですよ。もう一度よく思い出されたらいかがですか?」と、どんどん敬語になってきた。じーじは、怒り始めると口調が敬語になる(余談だが、私も頭にくると、敬語になるから血は争えない)。
しだいに、「あなた」が「あーた」になり、ついには「きさま」に、もう完全にケンカモードに突入。
じーじは耳が遠いので、声もデカい。ご近所を驚かせてもいけないので、窓を閉め。隣の部屋で、聞き耳を立てて傍観者となってみた。
どうやら、40年前にじーじの弟が土地を購入した時の話をしているらしい。さらに耳を澄ましてよく聞いていると、なんと! その際に、隣の家の人とちょっともめた件を、今! まさに起きていることのように話をしているではないか。じーじの声はますます大きくなり、どんどん、ヒートアップ。
「申し訳ないが、私の言っていることは何一つ間違っていない。そんな大切なことも忘れてしまったのかぁ~。兄である私を侮辱するのかぁ~」ついには「あーた(あなたと言っているらしい)とは裁判で決着をつけよう。次に会うのは、裁判所だな」と言って電話を切ったじーじ。
明日のスポーツ新聞の見出しは「認知星人VS軽度認知障害*(じーじの弟)。40年前の話でバトル!」だな、なんて面白がっている場合じゃない。まだ、怒りが治まらないじーじは、電話機の前で身体をプルプルさせて「裁判だ」とつぶやいている。このままだと、確実に次の攻撃先は私になる!と思い、じーじの安定剤であるビールに、大好物の冷奴を献上。
「湿気が多い日は、冷奴がうまい!」と言いながら、ニコニコしながら食べているのであった。めでたし、めでたし。
軽度認知障害(MCI)
認知症の一歩手前と言われる状態。物忘れなどの記憶障害があるが症状はまだ軽く、認知症ではないため自立した生活ができる。