「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

隣人への愚痴「れーこにいじめられている」ワケ

命の恩人、関所のおばちゃんありがとう!

 

ある日、テレビを見ながらウトウトとしていたら、なにやらじーじの声が聞こえる。家中を探してもじーじの姿を見えないが、声は聞こえる。玄関を見るとなんとじーじの靴がない! 声の行方を捜すと裏のおばちゃんの家から聞こえるではないか。よくよく耳を澄ましてみると「れーこにいじめられている~、れーこにいじめられている~」とじーじの声。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

ま! 待ってよ。いじめてないし、人様の家にまで行って何を言っているのよと焦る私。

 

どうやら、昼食時に「ビールが飲みたい」と言ったじーじに、「夜まで待っててね」といった一言が気に入らなかったらしい。

 

じーじの頭の中では、ビールが飲みたい+夜までお預け=れーこがいじめる。という方程式が出来上がったようだ。しかし、今、じーじを呼び戻しに行くと、じーじのプライドを傷つけることにもなるので、2階の窓からおばちゃんに気がつくように手を振り、謝りのポーズを繰り返すこと数分。私に気づいたおばちゃんはOKマークで答えてくれた。

 

数十分後、じーじは何事もなかったような顔で戻ってきたあと、しばらくするとソファーに座って高いびき。その隙に私はおばちゃんの家に行き、お礼とお詫びを言いに行った。やっぱり、「れーこにいじめられている」の原因は、ビールを飲ませてくれないだった。トホホ!

 

わが家は、袋小路の突き当たりにあるため、家を出る時も、帰ってくる時も、この家の前を必ず通過する。お天気のいい日には、お庭にいることが多いこの方は、じーじや娘の出入り(外出・帰宅の様子)もよく見ていてくれているので、私は密かに愛情をこめて「関所のおばちゃん」と呼んでいる。

 

数年前、脳梗塞を起こし、畑で倒れていたじーじを発見し、救急車を呼んで下さった命の恩人でもある。認知症になってからは、何度か無断外出を試みるじーじを発見し、通報してくれるなど、それはそれはわが家にとって素晴らしい功績の持ち主なのである。

 

「いつでも見張っててあげるから、安心してな」

 

こう言ってくれる、関所のおばちゃんありがとう!

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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