「鱒寿司が来たな! 満鉄に送ってくれ!」
満鉄と鱒寿司とじーじ
几帳面なじーじは毎日日記をつけている。といっても、何時何分「大」、何時何分「小」とトイレに行った時間が記入してあるだけだが(笑)。そしてなぜか毎朝、新聞をホチキスで留めて、今日の日付を確認するために日付を赤で囲むのが日課である。なぜかここ数週間、日記帳にも新聞にも「鱒寿司」の文字が書いてある。
「鱒寿司、食べたいの? 買ってこようか?」
「いや、俺が食べるんじゃない」
よくよく話を聞いてみると、どうやら、誰かが送ってくれることになっているらしいが……。
「鱒寿司が来たな! 満鉄に送ってくれ!」
「これは、鱒寿司じゃないよ」
「明日、届くから、満鉄に送ってくれ」
何で満鉄? なんて聞こうものなら、認知星の怒りん坊星人に変身してしまうので、ここはひとまず「わかったよ!」と返事をしたものの、本当に鱒寿司が届いたらどうしよう……そこで思い切って聞いてみた。
「鱒寿司さあ、満鉄の誰宛てに送るの?」
「誰宛て? そんなもん、差出人の俺の名前を見れば、しかるべき人に届くように手配してあるから、そんな細かいことを心配するな。それより、鱒寿司が来ないことの方が問題だ。約束を破ると、国際問題に発展するからな」
な! なんと、鱒寿司を送らないと国際問題に発展するらしい。そりゃ~大ごとだ。
それから毎日、普段まったく気にしない(というか、耳が遠いので聞こえていない)玄関のチャイムの音に異常に反応し、「鱒寿司か、満鉄に送れ」を連発。鱒寿司でないことがわかると、「早く送らないと、本当に大変なことが起こるぞ」とご機嫌ナナメになる始末。
そして数日後、ついに鱒寿司がわが家に届いてしまった。さあ、どうやって満鉄に送ったことにするか思い悩むが……。
「鱒寿司来たよ」
「来たか! 食うぞ!」
と食べる気満々。満鉄に送るんじゃなかったんかい!