物件力アップと不動産屋を活用して空室を解消
この退去立ち会いは、非常に重要な業務となる。退去するときに、入居前の状態に部屋を戻す「原状回復」をめぐる費用負担についてのトラブルは少なくないからだ。そのため国土交通省では、修繕費用が家主側、入居者側どちらの負担になるかの判別をするために、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を制定。東京都はそのガイドラインの内容を「条例」としている。さらに、2020年の「民法改正」では、この原状回復に関するガイドラインが新規条項として追加されることが決まっている。
その他、あらかじめ契約書に特約として「退去時にハウスクリーニング代10万円を借主負担とする」などと明記している場合は、原状回復費用が決定後、原状回復費用とハウスクリーニング代を敷金から差し引いて入居者の口座に返金する。
こうした退去・原状回復の手続きは、自主管理の場合、家主自身が行うが、仲介した不動産会社に手続きを依頼するケースも少なくない。賃貸管理委託や、サブリース委託の場合は、管理会社が手続きをする。
不動産会社はこうして味方につける
不動産会社と一口にいっても、さまざまな取引形態がある中、一般媒介の不動産会社や管理会社と、どのように連携していけばいいのだろうか。
北海道札幌市の山岡清利さんは、当初は管理会社に任せっきりだったが、空室の大量発生や費用負担の重さから、自主管理、つまり募集のみを不動産会社に依頼する一般媒介に切り替えた家主だ。大量の空室を埋めるために、所有不動産を回って状況を把握し、不動産会社を回って営業した。その結果、空室はスムーズに解消した。そこでわかったことは、「物件力が大事である」ことと「不動産会社を味方につける」ことだったと語る。
物件力は、リフォームやモデルルーム化することで向上できても、入居者募集は、不動産会社が動かないことには始まらないため、特に工夫が必要だった。不動産会社が自分の賃貸物件を紹介しやすいように、自身でできることは、できる限りサポートしたという。
例えば、物件写真は自身で撮影して、不動産会社がインターネットから簡単にダウンロードできるように準備。クリック数が上がるように、天気のいい日に青空が背景の外観写真を撮影しておく。また、物件に関する情報をメールでまめに配信する。
こうした準備は、実は繁忙期前の「閑散期」に仕込んでおく。その結果、山岡さんの部屋は「決まりやすい=即売り上げ」と評価され、仲介会社のスタッフたちに、「あとは来店客を待つのみ」と、いつも歓迎されたという。
「やはり彼らも入居希望者に良い部屋を紹介したいし、契約につながりやすい部屋をみすみす他社に取られたくはないと考える」と山岡さんは話す。