高齢の父親の家を訪ねると、いつも複数の人たちと談笑中。これまでになかった光景に疑問を感じて調べたところ、訪問販売の品々が…。ついには不動産業者と自宅売却の相談まではじめ、慌てた息子は民事信託を検討します。しかし、認知症の兆候が見られる父親にはあまり時間がありません。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
厳格だった父が「やけにフレンドリー」になってきて…
今回の相談者は、50代会社員の八木さんです。八木さんには80代の父親がいますが、認知症の兆候が出てきており、日常生活や日常会話には問題ないと思われるものの、片っ端から訪問販売の商品を購入してしまうなど、行動に不安があるといいます。相続の問題以前に、民事信託を組むべきかどうか相談に乗ってほしいとのことでした。
近年では、民事信託についてもテレビなどのマスコミで取り上げられる機会が増えたせいか、「うちも民事信託をしたほうがいいでしょうか?」といって相談に来られる方が多くなっています。
八木さんの父親は若いころから非常に厳格だったそうで、八木さんと兄は、ずいぶん厳しく躾けられたといいます。しかし、そんな父親が80歳に差し掛かってから次第に人柄が変わり、ずいぶんと愛想よく、人当たりも柔らかくなってきました。たまに実家を訪ねると、たいてい人を招いて楽しそうに話をしており、八木さんも最初は、ご近所の知り合いか友人かと思ったそうです。
しかし、よくよく会話を聞いてみると、招き入れているのは友人ではなく、訪問販売の営業担当ばかりです。実家には定期的に配達されるさまざまな健康食品をはじめ、羽毛布団や電気を当てて体のコリを取る健康器具など、かなり値の張る商品が増えていきました。
商品の購入をやめるよう父親を注意すると「わかった、わかった」と口ではいうものの、改める様子はありません。業を煮やした八木さんが健康食品等の定期購入を解約しても、また別のコースの配達がはじまるなど、いたちごっこです。
そんな父親にすっかり弱り果てていたのですが、つい先日、父親の様子を見るために実家を訪ねたところ、なんと不動産会社の営業マンと、楽しそうに自宅の売却話をしているではありませんか。八木さんは慌てて営業マンを追い出しましたが、そのことがあってから、父親が自分たちの知らないところで不動産を売却してしまうのではないかと不安でたまりません。父親の行動に歯止めをかけ、子どもたちの不安が解消できるなら、さっさと信託を設定したいと思っている、ということでした。
●父親の家族構成と財産の詳細
被相続人(予定):父親(配偶者は故人)
相続人(予定) :長男(50代会社員、既婚)
次男(50代会社員、既婚)
自宅土地・家屋:3,500万円
貸アパート :2,700万円
現預金 :5,100万円
有価証券 :2,100万円
合計金額 :1億3,400万円
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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