深刻な働き手不足に職員の質は低下している?
老人ホームに対する過度な期待は禁物
老人ホームで働いている介護職員は、「普通の人たち」です。最近では深刻な働き手不足により、職員の根本的な質は、大変残念ですが低くなっている一方です。したがって、どのような老人ホームに対しても過度な期待をしてはいけません。
中には気がきく天使のような介護職員もいないことはありませんが、常識と社会通念で考えた場合、このような介護職員は、何も介護現場で働かなくとも多くの業界が放っておくわけがないのです。より収入の多い仕事場で働く機会があるのが普通です。つまり、天使のような介護職員と巡り合う奇跡を望んでいてはダメだ、ということになります。
私は仕事柄、外で取引先と飲食を共にしながら、打ち合わせや会議をすることが多々あります。その中で、最近とくに感じていることは、飲食店でもスタッフの質が異常に低くなったということです。一流有名店とか大手チェーン店など比較的社員教育に熱心に見える店舗であっても、領収書1枚まともに作成できないスタッフと出会います。先日も、領収書を受け取って驚いたことがありました。なぜなら、私が受け取ったその領収書は複写式の会社控えである薄紙のほうだったからです。しかも、会社控えなので切り取り用のミシン目がなく、無理やりちぎったものでした。会社控えを返し、残っている本当の領収書の方を貰いましたが、ここまで人手不足は深刻になっているのかと改めて考えさせられました。
しょせんは「他人」、「他人事」であるということを受け入れる
多くの方の場合、自分の父親や母親は一人しかいません。そして、今まで歩んできた家族との歴史は「よきにつけ」「悪しきにつけ」他人と共有などできるはずもありません。
しかし、多くの入居者の家族は老人ホームに対し、自分たちが入居者に接するのと同じような思いを持って接してほしいと考えています。そしてそれを要求しています。
結論から申し上げます。それは無理です。不可能です。
それは、老人ホームの入居者はあなたにとっては唯一無二の人だとしても、老人ホームの職員にとっては、全入居者80人の中の一人にすぎないからです。そこに特別な感情はありません。誤解のないように申し上げておきますが、どのホームの介護職員も入居者とマンツーマンで対峙しているときだけは、その時間は職員にとって唯一無二の人になっているはずです。しかし、家族のような、永遠に唯一無二の存在でいることはありません。