人格が豹変。仕事を続けることができない状態に…
温和で顧客思いな人柄だったのが、仕事先とたびたびトラブルを起こすようになりました。簡単なミスが増え、指摘されるとキレるという今までの丸太さんからは考えられない行動をとるようになったのです。家でもひんぱんに感情を爆発させるようになりました。すっかり人が変わってしまったことに家族は戸惑うばかりでした。
病院で診断を受けた結果、認知症の一種である前頭側頭型認知症と診断されました。感情をコントロールする前頭葉と側頭葉に障害が起きる病気で、物忘れはあまり起きないものの、異常な行動や社会的に問題のある行動が増えるという症状に特徴があります。丸太さんの場合は顧客と喧嘩になることが増え、ついには仕事を続けることができなくなってしまいました。
丸太さんの症状は急激に悪化し、仕事を続けることができない状態となりました。
一家の収入はそれまで、丸太さんの事業から上がる収益がほぼ100%を占めていました。料理好きの奥さんがたまに教室を開いて料理を教えていましたが、趣味の域を出ず、利益はほとんどありません。丸太さんが働けなくなると、一家の収入はあっという間に途絶えてしまいました。
困った奥さんは自宅を改装して喫茶店を始めることにしました。付き合いのある近所の高齢者などがお客として来てくれたものの、夫を介護しながらの営業なので、働ける時間にも限りがあります。丸太さんは怒鳴ったり暴れたりするだけでなく突然倒れることもあったので、24時間目が離せません。
片手間の喫茶店では売上は月に15万円程度にしかならないため、足りない分は貯金を切り崩しながら住宅ローンを支払い生活費を賄う暮らしでした。しかしながらローンだけで月額25万円かかる上、丸太さんの介護や通院にもお金がかかります。貯金はすぐに底をつき、ついには住宅ローンを支払えなくなってしまいました。