「虫のよすぎる話」が通った驚きのカラクリとは?
不動産の売却には、「競売」の他に「通常売却」と「任意売却」があります。「通常売却」は所有者の一存で売却を決断でき、価格や条件なども所有者が自由に決めることができるものをいいます。不動産であれ何であれ、普通は自分の持ち物を売るのに誰かの承諾を得る必要はありません。自分が売りたいときに、売りたい価格で売却することができます。
一方、抵当権が設定されている物件についてはそうはいきません。抵当権を外してもらわなければ売却できないため、住宅ローンの残債がある物件を売却したい場合には、残債を完済して、金融機関などの債権者に抵当権を外してもらう必要があります。借金をすべて返して、物件が完全に自分のものになった状態でないと、売却できないのです。
しかしながら、住宅ローンの返済に行き詰まっている人は残債を完済することができません。物件を売却したければ、抵当権者と交渉することで「売ってもいい」という同意を得ることが必須です。「誰に」「いくらで」「どんな条件で」売却するのかを所有者だけで決めることはできず、必ず債権者の同意が必要となります。これが任意売却です。
ローンを支払えなくなった人が金融機関と交渉して了承をとり、全額返済できない状況下で売買を成立させるためには金融機関の協力が必須ですが、多くの場合は交渉に応じてもらえます。金融機関にとっても任意売却にはメリットがあるためです。
債務者が任意売却を行わなければ、金融機関は抵当権を行使して物件を競売にかけることになりますが、競売には「いくらで売れるかわからない」という大きなデメリットがあります。市場価格の6~7割程度で売却されることが多く、残債が多い場合には金融機関にとって回収不能の大きな損失が発生します。
一方、任意売却でうまく買い手が見つかれば、市場価格に近い価格で売却することも可能です。金融機関にとっては「より大きな額を回収できる」というメリットがあるため、交渉に応じるケースが多いのです。
丸太さんの場合も抵当権を設定している金融機関との交渉を行い、任意売却の手続きを始めることとなりました。