老人ホームの主治医に過度な期待は禁物
さらに老人ホームの場合、当たり前の話ですが高齢者が多く、中でも認知症の高齢者の比率が圧倒的に多いのですが、現実的には老人ホームの主治医は必ずしも認知症の専門医というわけではありません。中には、産婦人科や整形外科などの他の診療科目の先生が往診医になっているケースもあるはずです。
その場合であっても、ホーム側に配置されている看護師らと情報交換を行うことができれば、適切な処置はできるので問題はないと思います。しかし、それができないと疑義が生じる可能性はあると思います。
したがって、ホームで苦情が多いケースは医療ではなく、医師の人間性からくる苦情であるということを理解しなければなりません。ホームの提携先医療機関のA医師はヤブ医者だ、というのではなく、入居者や家族、ホームの看護師や介護職員らと適切なコミュニケーションがとれないために来る苦情。言いかえればボタンの掛け違い、言った言わないといったことが大きな原因になっているのです。
その昔、まだまだ老人ホームが今のように一般的ではなかったときの話です。
当時は老人ホームを開設するには医療機関との協力が欠かせなかったため、地域の医療機関を訪問し、協力をしてほしいとお願いに回っていたことがありました。もちろん無料ではなく、主治医になってもらうので医療報酬をとっていただくことが前提の話です。
しかし、多くの医療機関の医師からは「NO」と言われ、門前払いを受けたことも多々ありました。今の患者さんだけでも手いっぱいなのに、これ以上患者を増やすことは無理という理由からでした。さらに、正直な医師からは、「いつ死ぬかわからない高齢者をたくさん抱えたくない」とか、「高齢者は認知症など面倒なことが多いから嫌だ」と言われたことを覚えています。
つまり高齢者の患者、とくに認知症などの患者は、現実的な話としては他の患者と比較した場合、医療機関からは歓迎されていないと考えたほうが良いのではないかと思います。
私が言いたいことは、老人ホームの主治医に対しては「過度な期待はしないほうが良い」ということです。必要最低限のことは当然できますが、プラスαのことを望んではダメということです。
勘違いしないでください。老人ホームの医師の質が低いと言っているのではありません。多くは良心的な医師ばかりのはずです。しかし、彼らは老人ホーム専門医師とか高齢者専門医師とかの専門医師というわけではありません。大半は普通の医師であり、中には二足の草鞋として、副業で老人ホームの担当医になっている医師も多いのです。
これが現状なのです。したがって、高齢者の見せる微妙な様子の変化に対し、それが病気の症状であると見抜けない場合も多々あります。専門医なら当然わかる変化を見落とすことなど、老人ホームに限らず一般の病院にも多くある現象です。老人ホームに関わっている医師が、必ずしも高齢者専門医ではないということをぜひ覚えておいてください。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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