もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

老人ホームに「理想のケア」を求めていけない理由

つまり老人ホームは、国から配置が義務付けられている職員数だけでは、読者の皆さんが考えている理想のケアなど、とうてい実現できないということを理解してほしいのです。

 

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)
小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

さらにわかっていただきたいことは、職員配置数を多くしているホームは、他のホームよりも利用料金や入居金が高いという現実です。「もっとしっかりとケアしてくれると思っていた」という勘違いや思い込みは、この現実を知らない人が陥る大きな誤解なのです。私の評価としては、この職員配置数で介護職員は「よくやっている」と思います。

 

入居者が生きていく上で必要な最低限の介護支援。これが、国により介護保険法で定められている職員配置数だと理解してほしいのです。

 

ミスマッチを解説③ 母は、ほったらかしにされているのでは?」とは

 

たまたま家族が訪問した際、自室で自分の母親が一人、寂しそうに車いすに座っていました。それを目撃して「母は、ほったらかしにされているのでは?」と疑念を持つ家族は、意外に多くいるようです。しかし、これは老人ホームではよくある話であり、けして珍しくはない光景です。

 

職員配置数の話はすでに触れましたので、少し違う角度から解説していきます。

 

老人ホームの場合、入居者一人当たりの生活で考えると、職員は1人の入居者に対し、一日せいぜい数十分程度の関わりしか持つことはできません。自らの経験で申し上げると、私が老人ホームに勤務していた時代、マンツーマンで私が入居者と関わった時間は、入浴や食事介助などの個別のケアを除くと、間違いなく一人当たり一日30分もなかったと記憶しています。中には、1週間ぐらい一言も口もきかない入居者もいたと思います。

 

とくに、体調などにまったく不安のない入居者や自分のことはすべて自分でやってしまう入居者の場合など、一日数回の安否確認のときにしかお目にかからない場合も少なくありません。つまり、老人ホームの場合、多くの入居者、とくに急性期的に身体に心配のない入居者は、おおむね〝放っておかれている〟と言っても過言ではないのです。

次ページ介護職員も感じている「関わりの薄さ」とは
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