介護職員は、けっして「天使」ではない現実
過度な介護職員性善説を捨ててください
肝に銘じなければならないことは、介護職員は、けして「天使」ではない、ということです。
昨今、外国人労働者の話が介護業界だけではなく、巷をにぎわせています。外国人は「素行が悪い」とか「お金を盗む」などと言う日本人も多くいます。しかし、はたしてこれは外国人に限った話なのでしょうか? そうではなくて、外国人であっても、日本人であっても、素行が悪い人はいるし、お金を盗む人はいるということだと思います。
つまり、素行などは人種や国籍とは関係のない話です。介護職員の中には、本当に介護をするために生まれてきたような方もたくさんいます。しかし、それ以上に、仕方なくいやいや介護の仕事をしている人とか、他の仕事に就くことができず老人ホームでしか雇ってもらえなかった人たちも多く従事しています。これが現実です。したがって、介護職員を「天使」とは絶対に思わないことが重要なのです。
老人ホームの現場を歩いていると、職員に対するクレームを多く聞きます。そのクレームの多くは、期待どおりではなかったことに対するクレームです。逆に言うと、最初から期待しなければ、そもそもクレームなど発生しないというレベルの話がほとんどなのです。
多くの入居者や家族の中には「介護職員だから優しい」とか「介護職員だから親切」だという、根拠のない思い込みがあるように思えてなりません。中には、入居者や家族にとって、まさに期待どおりの言動ができる介護職員はいます。しかし、期待できないレベルの職員がいることも事実です。もちろん、これは老人ホーム業界だけの話ではなく、日本社会全体に共通している「日本人の劣化」の話だと私は思っています。
数年前に東京五輪の誘致活動において「お・も・て・な・し」というキーワードが、世界中にとどろいたことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。これについては本来、日本人の身体の中にある「お・も・て・な・し」の心がなくなりつつあるので、あえて口に出し、意識しなければならなくなったのでは、と私は思っています。
老人ホームの職員はけして「天使」ではありません。だから、過度な期待は持たないことです。介護職員は、介護支援の専門家ではあっても、入居者の生活全般に対し、必要な知識や技術を持っている高齢者の専門家ではありません。このことをよく理解した上で、彼らと対峙してほしいと思っています。