営業マンの言いなりに即決して2000万円の大損
最後、(6)の周辺の賃貸住宅の状況については、ライバルとなる賃貸住宅にはどんな物件があるか、入居状況はどうかなどを確認しながら見て回るといいだろう。たいてい賃貸住宅には管理会社や賃貸仲介会社の看板が設置されているので、どこの管理会社の物件かを知ることもできる。その看板一つ見ても、特定の会社の看板が設置されている物件は空室が多い、あるいは少ないといった状況もわかるので、購入後、どこの管理会社に頼むとよさそうかという当たりをつけることもできるのだ。
ただ、ぶらぶらと見て回るだけでなく、地元の不動産会社も訪問して、地域の家賃相場や入居率、募集状況、地元の家主の経営力などをヒアリングする。1社だけでなく複数社回ることで、地域のおおよその状況はわかる。
現地を見ずに2000万円損をした家主
実際、こうしたポイントを押さえず、現地確認をしないで購入したために痛い目に遭った人もいる。
土地を見ずに購入し2000万円損してしまった首都圏に住む吉田さん(仮名)だ。吉田さんは6棟の収益不動産を持つサラリーマン家主。ある日、自宅に不動産会社が訪ねてきて「売り地にアパートを建てませんか。高く買うという人がすでにいるんですよ」と土地の転売を持ち掛けてきた。住所を見ると、自宅からそれほど遠い場所ではなかったが、あまり気乗りしなかった吉田さんは一度は断った。しかし、それでもなおしつこく営業に来るので、結局営業マンの押しの強さに負けて、仕事が忙しいこともあり、一度も現地に行かずに購入してしまったという。
購入後、現地に行ってみると、そこは土地の傾斜が急で建物の建築には不向きな崖地だった。その崖地にアパートを建てる場合は傾斜地を整地しなくてはならず、その費用も必要となるため、そんな説明を受けていなかった吉田さんは不当だとして、提訴した。結果的に和解になったが、吉田さんの主張はほとんど通らなかった。理由は、建物を建てることで利益を得る目的で契約を結んだにもかかわらず、原告である吉田さんは、実際に建物を建てなかったからだ。結局、吉田さんはこの土地を売却したが、購入価格よりも2000万円損をした。
吉田さんの場合は、土地だったが、建物の場合も現地に行かずに購入することには同様のリスクが考えられる。
建物の状態をチェックし、リフォームがどの程度必要か、費用はどの程度かかりそうかの目途をつける。その上で、物件周辺を歩いてみて、その地域の住み心地を確認し、最後は地元の不動産会社を回って不動産会社から見た評価を聞き、総合的にその不動産の収益性がどうかを判断した方がいいだろう。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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