心の準備もないまま、突然実家を相続することになった30代の独身会社員男性。相続財産をどうするべきか、自分の心が定まらないまま、時間ばかり過ぎてしまいます。数百万円単位の相続税も心配です。親から受け継ぐ土地を自分のものとして維持したいのか、手放しても後悔はないのか…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

売却か、活用か…広すぎる実家を持て余す30代男性

今回の相談者は、30代会社員の村山さん(独身)です。このたび思いもしなかった事態が発生し、幼少時代から暮らしてきた横浜市の実家を相続することになったそうです。しかし、そのままひとり暮らしとして住み続けるには土地が広すぎ、庭や家屋を管理するのも非常に大変だと、筆者のもとに相談に見えました。家屋は数回にわたってリフォームしているものの、築40年と老朽化しており、長く生活していくのはむずかしいとのことでした。

 

面談の席で途切れ途切れに出る言葉と、緊張した面持ちから、予期せず突然発生した相続の問題に戸惑い、動揺されていることが見て取れました。

 

 

そこで筆者は、村山さんのお気持ちをじっくりとうかがいながら、土地を残すべきか、売却して新たな資産に変えるべきか、どの方法が村山さんにとって最適であるかを考慮しつつ、打ち合わせを重ねていきました。

 

何回かにわけて面談しながら、検討を続けたところ、村山さんには土地を残していきたいという想いがあることが明確になったため、土地は売却せずに有効利用するプランをご提案しました。

 

筆者から提案したのは、所有する土地への賃貸物件の建設です。

 

建物概要:木造メゾネットタイプ、2LDK×4世帯(ガレージ付)+貸駐車場2台分
目  的:土地活用
事業資金:借入

 

 

あああ(※写真はイメージです/PIXTA)

ガレージ付き&全室角部屋という贅沢さをアピール

村山さんの実家がある地域は、比較的高所得な人々が多く、街並みも美しく整ったおしゃれなところです。村山さんからは、周辺に溶け込みながらも、瀟洒で個性を感じる建物にしたいとの希望がありました。

 

周辺を調査すると、少し離れたエリアにガレージ付きの個性的なマンションがあり、多くの富裕層が入居しているとの情報があったため、それを計画へ取り入れることにしました。

 

入居者のターゲットを「車好き」「ファミリー」に絞りこみ、プライバシーや防犯面を考慮した、電動シャター付インナーガレージをつけることにしました。また、2方道路という土地の特性を活かし全室を角部屋として、各部屋には大きな収納スペースを設けることにより、戸建て住宅の感覚で住めるようにしました。

 

建物の外装や間取りだけでなく、内装も壁紙や水回りの色・素材を変え、部屋ごとの雰囲気に変化をつけ、さまざまな年代の方の好みに対応できるようにしました。1棟の建物でありながら、その結果、いろいろな表情を持った、幅広い年齢層の入居が狙える建物となりました。

経済効率と将来的な利便性を考え「木造」を選択

計画段階では、さまざまな工法のほか、10以上のプランを提案しましたが、最終的に木造で建築することになりました。 建築費が抑えられるためコストの負担が軽減でき、出資を早く回収できます。30代とまだ若い村山さんですが、万一働けなくなるなど最悪の状況になり、ご自身のアパートに居住したとしても、収支が合うようになっています。

 

また、将来この土地を売却したり、老後にあらためて自宅を建てたりするなど、ほかの利用方法を検討するときも柔軟に対応できることが、木造を選んだ理由です。

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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