注目すべきは人々の不動産に対する価値観の変化
ポスト・コロナの不動産は大きな転換点にある
コロナ禍を契機に、「仕事」が変わり、仕事が変わることで必然的に「会社」が変わる。会社が変わるということはその結果として「消える」ビジネスと「伸びる」ビジネスが明らかになる。これまで会社に縛りつけられてきた多くの勤労者たちにとって、可処分時間が増加し、そのことに伴ってライフスタイルが変化する。ライフスタイルが変わって、自分たちが住む街で一日の多くの時間を過ごすようになると、人々が街に求めるものが変わる。その結果として「街」が変わる。そういったことをお話ししてきました。
それでは、こうした大変革をもたらすこととなる、ポスト・コロナの時代に私たちを取り巻く「不動産」はどう変わっていくのでしょうか。
私自身、不動産事業プロデューサーとしてこれまで数多くの不動産ビジネスを手掛けてまいりました。また多くのクライアントのみなさまにご納得いただけるように、さまざまな角度からのアドバイスを行なってまいりました。いわば、日々実業という意味から生身の不動産に常に接してきた私から見て、ポスト・コロナの不動産は大きな転換点にあるという予感がします。
おそらくあと数年もして、今の状況を振り返るのならば、「ああ、あのときが転機だったのだな」とか「あのときもっと気づいていたなら」と思うのかもしれませんが、時代の転機というものはそんなものかもしれません。つまり、誰しもが変わったな、と気づくときは、すでに時代は「変わって」しまっているのです。
ポスト・コロナにおける不動産の行く末を展望してみることにします。
私はこれまでも、一般論として地価が上がるとか、マンション相場が暴落するなどという予想屋をやることを良しとしてきませんでした。投資はあくまでもプロの世界ですから、彼らにとって価格が上がるとか下がるというのは重要な指標と言えますが、一般の方々にとっては、あくまでも結果論にすぎないと考えてきたからです。
注目するのは人々の不動産に対する価値観の変化です。そしてポスト・コロナにおいては、これまでも申し上げているように、価値観の相当な変化が起こりそうであることです。不動産の用途別にポスト・コロナ時代を展望していきましょう。
ホテル・旅館は生き残ることができるか
今回のコロナ禍で最も深刻な影響を被ったのがホテルや旅館といった宿泊業界、と言われています。
実際に影響はかなり深刻で、観光庁が発表する宿泊旅行統計調査によれば、20年4月の宿泊施設の平均稼働率は16.6%という惨憺たる成績に終わりました。前年同月が64.7%ですから、落ち込みがいかに深刻であったかがわかります。