新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

東京は住むのに評価の高い都市ではない

集中から分散が進む時代、それでは東京都心は今後どのような姿に変貌していくのでしょうか。もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

 

東京都心をイメージすると、何が目に映ってくるでしょうか。

 

東京は緑が多い都市だと言われます。たしかに東京のど真ん中である皇居は深い緑に覆われていて、緑が少ない大阪などとの違いが際立ちます。ところが、次ページの世界の主要30都市の緑地率ランキングを見ると、世界の主要都市の中で東京はけっして緑地が多い都市とは言えません。

 

東京の緑地率は、1人あたりわずか11平方メートルで25位です。香港の105平方メートル、台北の50平方メートルには遠く及びません。ちなみにあまり緑を感じないソウルでさえ23平方メートル、人口が多い上海でも18平方メートルです。緑の少ない大阪はわずか5平方メートル、調査対象30都市中29位という数値です。

 

森ビル記念財団では世界の主要42都市の総合調査「世界の都市総合ランキング」を実施しています。この調査は各都市を「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6つの分野から評価してスコアリングしているものです。

 

この結果(2019年)を見ると、東京は世界ではロンドン、ニューヨークに次いで第3位となります。ところが分野別で見れば居住で11位、環境に至っては23位と、けっして東京は住むには、評価の高い都市とは言えないことがわかります。

 

こうした点を踏まえて改めて東京という街を俯瞰すると、都内はオフィスビルが林立しています。同調査の経済分野では第4位ですので、当然と言えば当然ですが、居住性や環境で遅れているということは、オフィスビルばかりという見方もできます。

 

ポスト・コロナの時代になると、都心に通勤してきて仕事をするというこれまでの働き方に大変革が起こります。そうなると、東京の強みであった経済における優位性はあまり評価される項目ではなくなり、いかに住みやすい東京を造ることができるかが問われるようになってきます。

次ページ人の働き方が変わると東京が変わる
不動産で知る日本のこれから

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