借地権付き物件は価格が安いがデメリットも
鈴木さんから連絡がないので、その後、どうなったかはわからないと語る不動産会社社長だが、おそらく地主は、都心の好立地なので、底地(借地権の付いている土地)を取り戻せる絶好の機会だと思ったのではないかという。
借地権付き物件の場合、気をつけなくてはいけないのは、契約解除となったら、更地の状態で返さなくてはいけない点だ。鈴木さんは、投資額を丸々損するだけでなく、最悪の場合、解体費用も負担しなくてはいけなくなる。
「不動産投資の知識が不足したまま、安易に他人に言われるままに購入したことがトラブルの原因だ」こう話すのは、著書『新米大家VSおんぼろアパート〝赤鬼荘〞——満室までの涙の240日』(ごま書房新社)で家主業の大変さをユーモアを交えつつ紹介した、現在、不動産会社みまもルーム(東京都文京区)の社長を務める渡辺よしゆき氏だ。
鈴木さんのようなケースは、あまり多くはないだろうが、「自身で勉強せず、他人に頼って不動産を購入」という話は、本連載で何度も紹介している投資用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の家主と共通している。
借地権付き物件は、土地代がかからないため価格は安くなるが、金融機関の融資が付きにくい、借地契約条件によってはリフォームなどに制限がある、売却には地主の承諾が必要、建物が古いため売却先を見つけにくいなど、多くのデメリットがあることも留意しておくべきだろう。
再建築不可物件――接道する隣接地を購入できればチャンス到来だが
建築基準法上の道路に接していないため、建て替えができない土地を「再建築不可物件」という。当然、資産価値は低く価格も安い。また、再建築不可物件の多くが、建築基準法が制定(1950年)される前の古い建物であるケースが多い。
実際、再建築不可の土地とはどのような土地なのか。建築基準法上の道路は、原則として公道など幅4m以上のものだが、4m未満の道路でも、建築基準法上の道路とみなされる場合がある。これらの道路に2m以上接していない土地は、今後、建物を建築できない。地震や台風などの自然災害や火災などにより、建物が半壊、全壊した場合でも建て直しできないため注意が必要だ。
ただし、メリットもある。接道している隣接した土地が売りに出る可能性がある場合、売りに出たタイミングで購入すると、建て替え可能な土地を一気に取得することができるのだ。再建築不可の土地は、都心立地でも安く売りに出ているので、接道している土地を時価で購入したとしても、合わせて考えれば安く購入できる可能性が高い。
成功のポイントは、一にも二にも事前リサーチだ。初心者がこうした情報もキャッチして再建築不可物件を買うのは相当ハードルが高いかもしれないが、さまざまな知識や情報網を身につけ経験を積んだ上でなら、挑戦しがいのある物件といえるだろう。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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