東国病院に赴任した「僕」。まず足を踏み入れたのは…
■頑張らなくちゃ
僕は、外科の手術を見学することにした。更衣室で着替えて、手術の進捗状況を示すボードを見ると、胃癌、肝臓癌の手術が行われている最中であり、大腸癌の手術がこれから行われるところだった。つまり、外科の手術だけで3つの手術室が同時に使われることになる。
これを医学用語では「横3列」という。しかも、胃癌は今の手術が終わると、入れ替えでもう1件予定されている。これは「縦2列」という。
石山病院では癌の手術は1日に1件あるかないかで、横2列だとしても癌のような大手術が2室で同時に行われることはなかった。やはり東国病院はスケールが違う。
とりあえず僕は、これから行われる大腸癌の手術を見学することにした。
手術室だけで20部屋以上あり、迷路のようになっている。目的の部屋にたどり着くだけでもひと苦労だった。
ようやく部屋にたどり着き、のぞき窓から部屋の中を確認する。
「よし、入ろう」
意を決してドアのフットスイッチを踏み、手術室内に足を踏み入れる。