「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

東国病院に赴任した「僕」。まず足を踏み入れたのは…

■頑張らなくちゃ

 

僕は、外科の手術を見学することにした。更衣室で着替えて、手術の進捗状況を示すボードを見ると、胃癌、肝臓癌の手術が行われている最中であり、大腸癌の手術がこれから行われるところだった。つまり、外科の手術だけで3つの手術室が同時に使われることになる。

 

これを医学用語では「横3列」という。しかも、胃癌は今の手術が終わると、入れ替えでもう1件予定されている。これは「縦2列」という。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

石山病院では癌の手術は1日に1件あるかないかで、横2列だとしても癌のような大手術が2室で同時に行われることはなかった。やはり東国病院はスケールが違う。

 

とりあえず僕は、これから行われる大腸癌の手術を見学することにした。

 

手術室だけで20部屋以上あり、迷路のようになっている。目的の部屋にたどり着くだけでもひと苦労だった。

 

ようやく部屋にたどり着き、のぞき窓から部屋の中を確認する。

 

「よし、入ろう」

 

意を決してドアのフットスイッチを踏み、手術室内に足を踏み入れる。

次ページ大腸分野の部長である西田先生に声をかけられた。
孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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