8時30分から9時までの30分間は一刻を争う戦い
■手術室は戦場
東国(とうごく)病院の外科では、毎日5件程度の手術が行われている。1人の医師が受け持つ手術は1日に1、2件である。
病院の始業は8時30分で、朝一番の手術は9時入室だ。9時入室というのは患者さんが手術室に入る時間である。そのため、僕ら外科医はその前に手術室に到着する必要がある。
病棟では8時30分の始業開始とともに申し送りが行われ、患者さん1人1人の1日の予定や注意事項を丁寧に確認する。その後、朝一番で手術を受ける患者さんを手術室まで送る。
手術室でも始業開始とともにその日の手術予定を確認し、注意事項やスタッフの動き方などを確認する。その後、手術室の準備を整え、9時入室の患者さんの受け入れ態勢を整える。
病棟担当にとっても手術室担当にとっても、8時30分から9時までの30分間は一刻を争う戦いである。
手術前の患者さんは、どんなに簡単な手術であっても緊張している。外科医にとって手術は日常茶飯事で特別なことではないが、患者さんにとっては一生に一度あるかないかの一大事であり、人生最大の分岐点になる可能性もある。不安な気持ちを抱えて入室してくる患者さんにとって、入室時に担当医がいるのといないのとでは安心感が全く違う。
だからこそ、手術室に入った時に、すでに患者さんが入室していると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。次は(なんとしてでも間に合わせよう)と思う。
しかし、現実はそう簡単にはいかない。