「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

「もういいよ。ちゃんと練習してきて」

転機は1年目の冬に巡ってきた。外科研修で、医師10年目の中堅、長谷川先生が指導医となったことである。外科では手術の技術が求められる。技術が全てではないが、かなり重要である。

 

「よし、じゃあこの糸を結んでみて」

 

チャンスは突然にやってくる。

 

「じゃあ次はこれをやってみようか」

 

そつなくこなすことができれば、次のチャンスが与えられる。

 

「もういいよ。ちゃんと練習してきて」

 

うまくできなければこう言われて、次のチャンスはなかなかこない。チャンスを与えられた時にできることをアピールすることで次のチャンスが巡ってくる。外科はそんなシビアな科だった。

 

体育会系の部活動に似ているところがある。同期がいれば当然競い合うことになるし、比べられる。

 

僕は子どもの頃から家族で一番きれいに魚を食べることができたし、図工も得意だったため、手先を上手に動かす器用さが求められる手術には興味があった。しかし競争は嫌だったので、外科医になりたいわけではなかった。

次ページ糸結びができないと命を取られるかもしれない
孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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