「あなたが執刀するんだよ」新人医師の初手術。全身が強張り…

「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

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初執刀

東国(とうごく)病院に来て2ヶ月が経過した。僕は相変わらず、手術に回診に忙しい日々を過ごしている。

 

1日1食の生活スタイルには慣れたが、外科医としてはまだがむしゃらに目の前にある課題に取り組んでいるだけで、とても慣れたとはいえない。手術前、いつも通りに手洗いを済ませ、ガウンを着て、所定の位置につく。

 

これから行われるのは腹腔鏡手術だから僕はスコピストだ。執刀医と助手が患者さんの頭側に向かい合わせに立ち、僕は執刀医の足側に立つ。ドレーピングを行い、器具を並べていく。

 

「よし、じゃあ山川君はこっちに来て」

 

準備が整うと、本日の執刀医・岡島先生はそう言って一歩下がり、自分のいた場所を指し示した。

 

「え? あ、はい」

 

僕は戸惑いながらも岡島先生と入れ替わるように執刀医の位置に立つ。

 

(もしかして……)

 

「そう、今日は山川先生が執刀するんだよ」

 

岡島先生はまるで僕の心の声を拾ったかのように言った。

 

「はい」

 

ついにこの時がきた。

1991年生まれ。消化器外科医。趣味はプロ野球観戦だが、今は手術の修練や日々の予習・復習に追われており、久しく球場に足を運べていない。ほとんどの時間を仕事に捧げているが決してデキる外科医というわけではない。そんな不甲斐ない自分をいつも励ましてくれるのがもう一つの趣味である小説である。小説の中で頑張っている主人公に出会うと「僕ももう一度頑張ってみたい、頑張れる気がする」と思えてくる。僕もそんな魅力的な主人公を描いて、医師として人の命を、小説家として人の心を支える存在になりたい。

著者紹介

連載孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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