過去20年間で経済規模が約6倍に拡大するなど、急成長を続けるASEAN諸国。しかし「不動産投資のしやすさ」の点から評価すると、かなりばらつきがあります。本記事では、日本人でも投資しやすく、各国の投資家からも人気が高い、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナムの4ヵ国について、経済や不動産市況を比較します。※東南アジアの不動産物件を幅広く扱っている、フォーランド リアルティ ネットワーク ジャパン株式会社の代表取締役・中尾孝久氏が、ASEANの4ヵ国を中心に不動産市場の現況を解説します。

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フィリピン、ベトナム…不動産投資のチャンスは多い

一方、フィリピンとベトナムは潜在的な成長力が高いだけでなく、不動産市況も力強さと健全さを保った状況にあることから、不動産投資のチャンスは依然多くあると考えています。

 

 ●フィリピン 

 

かつては「アジアの病人」と揶揄されたフィリピンですが、積極的に改革や外資誘致を進めた結果、2000年以降は平均5%超の高成長が続いています。輸出頼りの国が多いASEANにあって、数少ない内需主導の高成長国であり、1億人超の若い人口や在外フィリピン人からの継続的な資金還流が高い成長力を生み出す中、現在は「アジアのライジングスター」(米格付大手ムーディーズ)などと評価は一変しています。

 

フィリピンの不動産市場の魅力としては、物件価格の上昇と高い利回りが比較的両立しやすい環境であることが挙げられます。実際に弊社が管理するマカティCBDのコンドミニアム(2018年完成)を例に挙げると、物件価格は新築販売時から約50%上昇したものの、表面賃貸利回りは9.6%と高水準を維持しています。近隣諸国では物件価格の上昇に賃料が追い付かず、利回りが大きく低下しているケースが多々見られますが、所得増や海外からの資金還流が購買力を刺激するフィリピンでは、高い利回りを維持しながらの健全な価格上昇が続いています。

 

なお、フィリピンではコロナ禍でも高級物件を中心に旺盛な需要が続いており、2020年第2四半期(4~6月)の住宅価格指数は、前年同期比27.1%上昇して過去最高値を記録。コンドミニアムだけに絞ると、同30.1%上昇しています。

 

大型インフラ計画「Build Build Build」の目玉である、マニラ首都圏地下鉄などの整備も進行しているほか、今年に入りREIT市場が立ち上がるなど支援材料も多く、フィリピンの不動産市場は引き続き成長が期待されます。

 

 

 

 ●ベトナム 

 

最後にベトナムですが、「ドイモイ政策」によって市場経済に移行し、対外開放が進められたことで、タイに代わる“ASEANの新輸出大国”へと躍進しており、過去30年間の平均成長率は6.8%、さらに一度も4%を下回ることなく安定的に推移しています。また、現在のコロナ禍においても迅速な対応で影響を最小限に抑えており、2020年は多くの国で大幅なマイナス成長が見込まれる中、ベトナムは2~3%程度のプラス成長が予測されています。

 

堅調な経済に比例するように、ベトナムに対する国際的な評価はうなぎ上りで、コンサル世界大手のPwCは「2050年にかけて世界で最も高成長を遂げる経済大国」と評しています。

 

一方、不動産市場に目を向けると、ベトナムは2015年7月に外国人による投資が解禁されたばかりで、まだ海外マネーの流入が限定的です。そのため、近隣諸国と比べて相対的に価格は割安に置かれており、ホーチミンの高級マンション価格はバンコクやクアラルンプールの1/2~1/3程度(日本不動産研究所データ)となっています。

 

外国人に門戸を開いて以降、住宅価格は右肩上がりとなっていますが、それでも金融危機直後の2009年と比べていまだ低い水準にあり、今後投資インフラの整備も進むと見られる中、ベトナムはまだまだ伸び代の大きい市場だと考えています。

 

 

 

 

中尾 孝久
フォーランド リアルティ ネットワーク ジャパン株式会社
代表取締役

 

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