フィリピン経済はコロナ禍で大きな影響を受けましたが、緩やかな回復基調を辿っています。一方、マニラ首都圏の不動産価格は、コロナ禍で以前からの過熱感が解消された形になりました。フィリピン不動産の現況と今後の見通しを、東南アジアの不動産に詳しい中尾孝久氏(フォーランド リアルティ ネットワーク ジャパン株式会社代表取締役)が解説します。

コロナ禍でGDP成長率は大幅下落も、緩やかな回復基調

フィリピンのマニラ首都圏(※写真はイメージです/PIXTA)
フィリピンのマニラ首都圏(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この1年以上に渡り、世界中を社会的にも経済的にも混乱させてきた新型コロナウイルスのパンデミック。当然ながら、コロナ禍はこれまで目覚ましい成長を続けていたフィリピン経済にも、大きな影響を与えています。

 

フィリピンでは、感染対策として2020年3月からロックダウン(都市封鎖)状態となったことから、同年のGDP成長率が前年比9.6%減と、統計が開始された1946年以降で最大の下落率を記録しています。

 

ただ、一時は様々な経済活動がストップする状態にあったものの、昨年6月ごろから段階的に行動規制が緩和されていくなかで徐々に経済活動は再開。国内経済は昨年の第2四半期(4~6月)を底に緩やかな回復基調を辿っており、今後2年ほどかけてコロナ禍での経済的な落ち込みを取り戻していくことが予想されています(【図表1】)。

 

【図表1】コロナ禍のフィリピンGDP成長率

マニラ首都圏の不動産価格は過熱感が解消し、底打ち感

一方、不動産市場も経済の悪化に伴う売り急ぎに加え、入国規制によって都心部の物件の主要な買い手であった外国人マネーの流入も途絶えたことから、コロナ禍で大きく値崩れすることとなりました。

 

ただ、【図表2】の住宅価格指数の推移を見ていただくと一目瞭然だと思いますが、元々コロナ前の1年ほどは中国人バイヤーの動きが異常に活発であったため、マニラ首都圏の不動産価格は短期間で高騰し、過熱感が強まっている状況にありました。

 

【図表2】マニラ首都圏とマニラ首都圏外の住宅価格指数の比較

 

そのため、コロナ禍での市況の落ち込みで過熱感が解消し、適正な価格水準に戻ってきたことで、今年に入ってからは現地のローカル層を中心に買い手の動きが徐々に活発になってきており、それに伴いマニラ首都圏の不動産価格には底打ち感が見られ始めています。

 

なお、中古市場の一部では、物件オーナーの事情などからより割安感の強い物件も散見されています。マニラ首都圏の中心部でも、物件によってはコロナ禍前と比べて3割程度安い価格で市場に出回るものもあります。

 

こうした物件は足が早いのが難点ですが、巡り合うことができれば投資家にとっては大きなチャンスとなるでしょう。

 

≪参考物件≫

 

【物件名】
Eton Tower Makati

【エリア】
マカティCBD

【コロナ禍での価格推移】
PHP5,800,000(2020年1月)⇒PHP4,100,000(2021年5月) ≪約29%安≫

※出所:弊社仲介実績より

 

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