絶えず動いて落ち着きがない、話すときに視線が合わない…。一見すると、発達障害があるのか、それとも性格や気質の問題なのかわからない子どもが、全国の幼稚園や保育園で増加しています。今回は、読み書き算数のいずれかに限局された障害である「学習障害」の特徴や問題点について解説します。※本記事は盛岡大学短期大学部幼児教育科教授である嶋野重行氏の著書『もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

 

その原因は生物学的起源をもつ神経発達症とされています。これには、言語的または非言語的情報を効率的かつ正確に知覚したり処理したりするための脳の能力に影響を与えるような遺伝的要因と環境的要因があるとされます。診断基準は[図表]のとおりです。

 

[図表]限局性学習症/限局性学習障害の診断基準

 

次にそれぞれについて述べていきます。

1.読字障害(ディスレクシア):文字が読めない

読み書き障害は、「読み」の障害が基本です。「読めない」と「書けない」のです。もともと人の脳は生活環境において、言語は音声によるものだけでした。そこに、視覚的な形としての「文字」ができたのは今から約5千年前といわれ、文字という形が意味をもつ抽象的な記号として使われはじめたとされます。

 

この障害は、本格的には文字や数字を習う学齢時に顕在化します。たとえば、日常の会話はよくできるが、学習となると教科書の文字を読めない。逐字読み、読みとばし、読み間違い、勝手読み、知っている文字や単語だけを読む。二字であれば読めるが、長い単語になるとまとめて読めない。単語は読めるが文章となれば読めない。漢字の使用ができない、という学習困難が観察されます。

 

本来、人の脳は音声による言語を処理するような「音声専用仕様」ですが、「文字」が使われることで聴覚と視覚を結びつけ、言葉の意味を理解するという変換回路を後天的につくるようになりました。その学習の役割を担うのが、教育の力です。

 

就学時頃から半ば強制的に教え込むことによって、文字という視覚感覚を脳の中心にある部分で音情報として変換し、ブローカ野(言葉を理解するところ)に入力するといわれています。暗記・注入主義のような感じで、よいイメージはありませんが、小学校低学年の子どもたちはドリル学習で何回も繰り返すことで、その回路がスムーズになり、変換が容易になります。

 

小学校入学の6歳頃から脳のニューロン(神経細胞)をつなぐ絶縁性のミエリン(脳髄鞘)ができあがってくるといわれます。この時期に脳を鍛えることでニューロンを取り囲むミエリンが太くなり、脳回路がしっかりとできあがってくるとされます。

 

しかし、なかにはいくら練習を重ねても流暢に読むことができず、「読み」が上達しない場合があります。これが、読字障害ではないかと考えられています。「読み」ができるためには、幼児期から文字への関心、音韻意識、聴覚ワーキングメモリー(記憶)などを育てることば遊び、絵本の読み聞かせを十分に経験することが大切です。

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

次ページ音韻意識とは…
もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方

もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方

嶋野 重行

幻冬舎メディアコンサルティング

絶えず動いて落ち着きがない。話すときに視線が合わない。 一見すると、発達障害があるのか、それとも性格や気質の問題なのかわからない「気になる子ども」が、全国の幼稚園や保育園で増えている。 本書では、幼稚園の先生た…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧