絶えず動いて落ち着きがない、話すときに視線が合わない…。一見すると、発達障害があるのか、それとも本人の性格や気質の問題なのかわからない子どもが増加しています。今回は、ADHD(注意欠如多動症)の子どもに見られる特徴や、広く知られることとなった背景、原因などを解説します。※本記事は盛岡大学短期大学部幼児教育科教授である嶋野重行氏の著書『もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

「ADHD」が広く知られるようになった背景とは?

(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は、1980(昭和55)年のDSM‐Ⅲ(精神障害の診断および統計的分類の手引書)において「注意欠陥障害」の名称で登場しました。その後、アメリカで生活をしてきた司馬理英子氏の造語で、日本で平成9(1997)年頃から「のび太・ジャイアン症候群」という言葉で一般に広まりました。

 

これは藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』に登場する、のび太とジャイアンは、どこにでもいるようないじめられっこ、いじめっこですが、ADHDの症状に似ており、その症状の出方により、不注意優位型(のび太型)、多動性―衝動性優位型(ジャイアン型)、混合型の3つの型に分類されるということでのネーミングでした。

 

一方、全米ではサリ・ソルデン著“Women with Attention Deficit Disorder”(日本語では『片づけられない女たち』(ニキ・リンコ訳、WAVE出版、2000年)という本がベストセラーとなっていました。この障害はかつて、PDD(広汎性発達障害)、MBD(微細脳損傷)といわれていたものです。

 

また、DSM‐5(精神疾患の診断・統計マニュアル‐5版)での日本語訳では、「注意欠如多動症」という表記を示しました。なるべく「障害」という烙印(スティグマ)な見方を薄めるようにと「~症」を併記したとされます。

 

そして、平成20(2008)年に日本精神神経学会はADHD用語の和訳を「欠陥」から「欠如」としました。

「ADHD」が、学級崩壊や不登校に繋がることも…

平成初期、小学校において授業が成り立たないという状況に「学級崩壊」という言葉が使われはじめました。これは教師の指導力の低下、ゆとり教育、自由保育からくる集団活動の不足などの保育・幼稚園から小学校への接続問題と重なりあっていたのです。その原因の一つとして発達障害のある子の行動が誘発していると考えられました。そして、小学校までに保育・幼稚園で身につけておく力が問題となってきました。

 

すると、教室にいる落ち着きのない子どもには発達障害が疑われました。

 

落ち着きがない子ども…原因は「発達障害」かも(画像はイメージです/PIXTA)
落ち着きがない子ども…原因は「発達障害」かも(画像はイメージです/PIXTA)

 

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もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方

もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方

嶋野 重行

幻冬舎メディアコンサルティング

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