大規模小売店のほとんどがECに替わる
一部の宝飾品やブランドものがインバウンド客の急増で売上を下支えしたものの、百貨店売り場はたくさんの人を集めて大量に商品を売りさばくビジネスから、売り場をショールーム化して特定の顧客層に対して高品質な商品を提供するビジネスに変わる過渡期にあります。まさに今回のコロナ禍は下支えしていたインバウンド需要を剝がし、百貨店というビジネスの業態変革を加速させるものとなりそうです。
人が集まることなく買い物ができるのがEC(Electronic Commerce:電子商取引)です。ECは、商品やサービスをインターネット上で売買するビジネスモデルです。ひとくちにECと言っても参加者に応じて3つのタイプに分かれます。
一つが一般消費者向けに企業などが商品を販売する、いわゆるBtoCの取引形態によるものです。また企業同士が取引するBtoB方式のもの、一般消費者同士が取引するCtoC方式のものがあります。一般消費者同士のものはフリマアプリやネットオークションなどの形態をとるもので、個人間での取引も活発に行なわれるようになってきました。
ECのサイトはモール型と自社サイト型に分かれます。モール型はネット上の仮想店舗のようなもので、決済をモールが代行するだけでなくSHOPとしてのひな型を提供、店舗管理システムなども供与しています。日本では1997年に楽天市場がオープン、2000年にはアマゾンが日本語サイトをオープンして本格的に日本市場に参戦しています。
現在ECの市場規模は急拡大しています。経済産業省の調べでは2018年でBtoCマーケットの物販系は9兆2992億円。すでに百貨店協会集計の最高売上を記録した91年の数字に迫る勢いです。これにサービス系やデジタル系を加えると、次ページのようにその規模は17兆9845億円になり、小売市場全体の6.2%を占めるに及んでいます。またBtoBマーケットは344兆2300億円、CtoCマーケットで6392億円を記録するに至っています。
BtoCマーケットにおける分野別取引ではどうでしょうか。事務用品や文房具などは市場の40%、家電、AV機器、PCや周辺機器などは32%、本、映像、音楽ソフトは31%など、EC取引は小売市場の中での存在感を高めています。
すでに大きな地位を占めつつあったECをさらに拡張させたのが、コロナ禍です。これまでEC取引の中で、食品や飲料、酒などについてはマーケット全体のシェアはわずか2.6%というのが実態でした。今回のコロナ禍でも、国や自治体は毎日の買い物については不要不急の行為ではないとして、食品スーパーなどは自粛要請の対象から外しましたが、外食が制限を受ける中、スーパーは普段よりも多い買い物客で溢れかえり、濃厚接触のリスクを感ずるまでになりました。そこで注目されたのがネットスーパーです。