新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

ホテルの客室まで全部ライブ会場にしてしまえ!

そこで一計をめぐらしました。ホテルの客室まで全部ライブ会場にしてしまおうと考えたのです。つまり地下で行なわれているライブをそのまま客室すべてに配信することで、お客さんの数を飛躍的に増加させようと目論んだのです。

 

客室内には巨大なスクリーンと高音質のスピーカーを設け、お客さんは客室内であたかもライブ会場にいるかのような雰囲気を楽しめる。他のお客さんとは接しないのでカップルだけで楽しんだり、友達とだけ特別な時間を過ごしたりすることができます。部屋は防音効果の高い造りとしますが、基本的にライブ中はホテル全室で楽しむものなので、ライブ目的の客だけを対象にしました。もちろんレストランからはデリバリーで、ビールやピザなどをルームサービスする。ライブが終われば帰る客もいるのでホテルの部屋としての稼働率は大幅に上がるだろう、というものでした。

 

この素敵な提案は、事業主がその後この土地を手放すことになってしまったために実現できませんでしたが、こうした形態であれば、客同士のソーシャルディスタンスは守られ、しかも一体感も醸成できたのにと思われます。

 

映画館や劇場などは基本的に観客が大騒ぎをするような場所ではないので、今回のコロナのような感染症ではそれほど神経質になる施設ではないような気がします。おそらく席の間を広げる程度の対策をとりながら存続をしていくものと思われますが、世の中の流れとしては映像や音楽は限りなく配信の方向に動いていくことになりそうです。
 

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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