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「またこの季節がやってきた」気が重くなる理由
長野県内で70歳の夫と暮らすサワさん(65歳・仮名)。現在は夫婦ともに年金暮らしです。夫婦の年金は合わせて月約23万円。サワさん夫婦には約2,000万円の貯蓄があり、これは 内閣府「令和7年版高齢社会白書」が示す世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄現在高の中央値(1,604万円)を上回る水準です。 同白書において、60歳以上の人のうち経済的な暮らし向きについて「心配がない」と感じている割合は65.9%にのぼり、 贅沢をしなければ生活に困ることはありません。
それでも、この時期が近づくと気持ちが重くなるといいます。
「また、お盆が来るのかって思っちゃうんです」
サワさんには35歳の長女と33歳の次女がいます。 長女には小学1年生の娘と5歳の息子、次女には3歳の娘がおり、お盆になると2家族そろって帰省するのが毎年の恒例でした。孫に会えるのはもちろんうれしいことです。しかし、その数日間は、サワさんにとって「年に一番忙しい日」でもありました。
「実家でゴロゴロするのが最高」にモヤッ
娘たちは共働きです。普段は仕事と子育てに追われ、お盆くらいはゆっくりしたいという気持ちも理解できます。
実家へ帰ると、2人とも子どもの相手に付きっきり。料理が並べば当然のように席につき、食べ終わると再び子どもと遊び始めます。食器を下げることもありません。
そんなとき、姉妹が笑いながら話していた言葉が、今でも忘れられないといいます。
「やっぱり実家って最高だよね」 「普段忙しく働いているから、ゴロゴロできるのが一番」
その横では、娘婿たちもソファに座ったまま。
「孫の面倒もほとんど娘任せで、夫たちはスマホを見ているだけ。子供の世話もできないのかと普段、ちゃんと仕事をしているのか心配になる程です。横では夫も一緒になってのんびりしていて……ソファごとひっくり返したくなりました」
お盆が終わると3日寝込む
朝から晩まで料理、洗濯、布団の上げ下ろし、孫のおもちゃの片付け。さらに外食へ行けば会計はサワさん夫婦。夏休みだからと映画へ連れて行けば、そのチケット代も祖父母持ちです。
「お盆が終わると毎年3日くらい寝込むんです」
夫は「にぎやかでいいじゃないか」と言いますが、実際に動いているのは、ほとんどサワさん一人でした。
ソニー生命保険株式会社が実施した「シニアの生活意識調査2025」によると、孫がいるシニアが直近1年間に孫のために使った「孫消費」の平均額は11万3,074円となっています。その使途の1位は「おこづかい/お年玉/お祝い金」(69.8%)、2位は「一緒に外食」(54.4%)となっており、お盆休みの帰省ラッシュなどに伴う一時的なもてなしの支出が、高齢者世帯のサイフに小さくない負担を与えている様子が数字からも浮き彫りになっています。
「ホテルに泊まって」は大失敗
一度だけ、サワさんは勇気を出して娘たちへ言ったことがあります。
「今年はホテルに泊まってくれない?」
すると返ってきたのは、思いもよらない言葉でした。
「この時期は花火大会もあるし、ホテルなんて取れるわけないじゃない」「取れても高いし、実家があるのになんでホテル?」「子供たちだっておばあちゃんの庭のニワトリが産む卵をとるのを楽しみにしているのに……」
サワさんは、それ以上何も言えませんでした。
60歳で会社を退職したとき、ようやく自分の時間が持てると思っていました。旅行へ行ったり、友人とランチへ行ったり。そんな老後を思い描いていたところがお盆だけは、「家事代行兼ベビーシッター」になってしまう。
「孫はかわいいんですよ。でも、それとこれとは別なんです」