新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

マンション共用部はリモート書斎に?

このスペースをテレワーク用のフロアとして住民に提供することが考えられます。地下は光が入らないという難点がありますが、逆に集中しやすい環境を作ることは可能です。最近では液晶画面であたかも外の風景が本物のように見えるパネルなども開発されています。私も実際に見学したことがありますが、窓から見えるのは快晴のアルプス。まるで窓の外には心地よい風が吹いているかのような錯覚まで起こさせるほどの優れものでした。取り入れてみてもよいかもしれません。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

ポスト・コロナ時代では、マンション住民の多くが朝、三々五々エレベーターに乗ってマンション共用部にあるコワーキング施設に出勤。そこで決められた時間執務する姿が見られるようになるでしょう。

 

テレワークスペースの予約は管理組合にスマホで行ない、組合からは予約された個室の鍵の暗証番号が送られる。またはスマートロックにして、スマホをかざして扉を解錠して中に入る。

 

そんな風景がどのマンションでも共用部での日常となることでしょう。今多くのマンション管理組合では、ライフスタイルの変化の影響で、駐車場収入が減少しています。テレワークスペースの貸し出しは組合にとって新たな収益源になるはずです。

 

すでに分譲されているマンションでも共用部に陳列されて、これまでほとんど使われずに放置されていた、高級なソファや家具を取り除いて、コワーキングスペースに改装するマンションが出てきそうです。

 

この場合は、たとえばユニットバスのようにパネルを組み合わせて2畳から4畳程度の書斎部屋を設け、このユニットを共用部に並べてみてはどうでしょうか。各ユニットは防音のみならず、各種カメラを備え付けて、ネット上で会社と結ぶ、あるいは中で働く人の集中力を維持、向上させる空調システムや体調管理、健康管理のための器具などを備え付け、集中して仕事ができる環境を提供するなどの工夫もこらすことができるはずです。

 

戸建て住宅でも同様に、「働く」というコンセプトが取り入れられるようになります。住宅内に寝室とは別に、ワーキングスペースが整えられるようになるでしょう。戸建て住宅はマンションよりもスペースに余裕が持てるものも多いので、「働く」ための快適な装備はより充実したものにすることも可能です。

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不動産で知る日本のこれから

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