新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

10年以内に「サラリーマン」はなくなる?

ポスト・コロナ時代、私はこの、いい意味でも悪い意味でも気楽な商売だったサラリーマンという職業は、世の中からなくなっていくのではないかと見ています。なぜなら中間管理職のうちのほとんどが存在意義を失い、個人事業主化した個人と会社が業務委託契約のような契約関係でつながるようになってくれば、会社の中の上下関係や同じポジション同士の社員のつばぜり合いは、あまり意味のある話ではなくなるからです。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

それぞれがプロ意識を持ち、自らのアビリティで仕事をするようになれば、もちろんそれを高く評価しない相手に対して愚痴を言うことがあっても、嫌なら契約を解除して別の取引先と契約し直すことができるようになります。


 
いっぽうで能力のないサラリーマンのままでは、やがて「262の法則」が崩れて、6の中で排除されていく運命にあります。村の掟しか知らずに時間を重ねてしまったサラリーマンに、生きる道はわずかなものとなってしまうはずです。もはやサラリーマンという身分は保証されなくなり、楽しかったはずの村にも通う術がなくなってしまうことでしょう。

 

需要がどんどん膨らみ経済成長を続ける時代は、誰でも幸せをつかむ道がありました。サラリーマンになって、大きな失敗もせずに真面目にコツコツ勤めていれば、年齢とともに給料も上がり、多少の違いがあったとしてもある程度の役職にも就くことができ、定年時にはまとまった退職金と大企業であれば潤沢な年金もいただけました。

 

しかし今、サラリーマンの最上位層に君臨する大企業サラリーマンの間でさえも、大きな変革が訪れています。このままでは身分の保証が得られない可能性が出てきたのです。仕事の仕方が変わる、組織が変わる、人の評価が変わる。ブランドで選んでいた就活にもやがて変化が訪れるでしょう。

 

ところで、この不要となった大量のサラリーマンはどこに行けばよいのでしょうか。日本の法律上では簡単に馘にはならないのですが、おそらく会社はこれまでのように彼らを手厚く遇してはくれなくなるでしょう。もはや村民として楽しい暮らしを保証してくれることはないからです。

 

大企業はまだしも中小企業では、リストラされたサラリーマンが今後街中に溢れるようになることでしょう。残念ながら彼らが今までできると思っていた仕事の多くは、ITに代替されてしまいます。いくら人手不足だといっても、事務系の仕事以外で、たとえば今さら肉体を駆使するような仕事に就けるとも思えません。

 

サラリーマン苦難の時代なのです。だからこそ今からでも遅くはありません。自分の職能、アビリティは何なのか。それが見つかれば徹底的に鍛え、磨き上げることをやっておかなければ手遅れになります。

 

おそらく現在から10年以内に、サラリーマンという単語は死語となっているでしょう。だいたいサラリーマンという職業定義はおかしなものです。何ができるのか何も語っていないからです。設計士だって鉄筋工だってコンピュータープログラマーだってユーチューバーだって、なんとなく何をやっているかわかります。サラリーマンって? になるのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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