2019年に厚生労働省が発表した人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、2018年の出生数は91万8,397人となり、調査開始以来の過去最少の数値を記録しました。一方で、同年における65歳以上の人口は3,515万人。総数の27.7%にものぼります。まさに「超少子高齢化」が進む日本ですが、それに伴い深刻化しているのが「空き家」問題です。本記事では、我が国における「空き家」の実態を解説します。

空き家・空き住戸の問題が解決しない理由とは

賃貸マンションの場合には、共同住宅ならではの問題もあります。住環境を重視し、それなりの家賃が支払える入居者は、それなりの社会的ステイタスがある場合がほとんどです。こうした入居者が絶えず入っているマンションは、マンションそのものが美しく維持され、スラム化することもありません。

 

しかしオーナー側が借り入れ返済を優先するあまり、「安くてもいいから家賃を確保したい」と来る者を拒まずに入居者を受け入れてしまうと、経済的な面、あるいは治安やモラル的な側面からも適切にマンションが維持されず、マンションのスラム化に陥ります。そこからさらに入居不振という悪循環につながってしまうのです。

 

また戸建ての空き家が増えている理由には、単身で暮らしていた所有者が亡くなったり、介護施設などに移ったまま戻らなかったりというケースがあります。また壊したくても、解体費用に数百万円もかかる場合もあり、その費用が捻出できないこともあるでしょう。

 

さらに税制の問題から空き家を「そのままにしておいたほうがいい」と考える場合もあります。小規模住宅用宅地では、その土地に建物があれば固定資産税が6分の1に減免されますが、更地にすると制度が適用されません。そうなると、所有者にとってはぼろぼろの空き家でも「立っていたほうがいい」となるのです。

 

また、更地にした場合、新たな建物を建てられないこともあります。一例を挙げれば、現行の建築基準法では一定以上の幅のある公道に面する部分が2m以上ないと建てることができません。そのため条件を満たしていない場合には、やはり「壊さない」という選択になりがちです。

 

こうした空き家問題の多くは、これまで人口減少が顕著な地方の自治体で起こっていました。ところが現在は、人口の減少はそれほど顕著でもないはずの首都圏の郊外などで起き始めているのです。住宅の需要が首都圏であってもより都心部に向かう傾向があることや、相続のトラブルなどから空き家が増えている場合もありますが、だからといってこのままにしておいていいということはありません。

 

この問題の対応のため、政府は2014年11月には「空家等対策特別措置法」を制定し、「特定空き家」に対し適切な管理を促す指導・勧告などのほか、跡地の活用促進、行政代執行なども可能にしています。勧告に従わない場合は自治体が強制的に取り壊し、解体費用を所有者に請求する場合もあります。

 

また空き家の問題は故人の遺品整理やごみの問題などを含んでいることがしばしばあります。これらを含めた管理や活用のアドバイスを行うNPO法人や空き家バンクなど、現在ではさまざまな取り組みが行われています。

 

空き家に至る事情やその状態もさまざまです。ストック住宅の一種として活用に向けて意識の転換が必要な場合もあるでしょう。空き家の問題には、現在の日本が抱えるさまざまな問題が含まれているのです。

これからのマンションに必要な50の条件

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熊澤 茂樹,安井 秀夫

幻冬舎メディアコンサルティング

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