価値観が変わり、居住形態にも変化が訪れた
かつては「自立して家を建てる」とか「郊外の高台に住む」ことが、人生において一つの目標であり、憧れの人生モデルであったものです。もちろん今でも住まいの選択肢の一つではありますが、バブル期やその後のリーマンショック以降、価値観の多様化は進み、誰もが同じゴールを追いかけることは少なくなってきています。
景気が低迷するなかでリストラの憂き目に遭ったり、非正規雇用の状態に甘んじたりしていれば、自分の家を持つことすら叶わぬ夢です。また男女ともに結婚年齢が上がって少子化も進み、生涯未婚率も高まっています。
価値観が変われば住まいも変わります。職住近接の傾向も高くなり、郊外に広い家を持つよりも、利便性を重視して「狭くても交通の便の良い場所に住みたい」と考える人も増え、都会で「コンパクトに暮らす」ライフスタイルを選ぶ人も少なくありません。人と同じ夢や理想を持つ時代ではなくなっているのです。
またバブルさえ知らない若者たちは身の丈以上の生活を望まないケースも多いといいます。都市部に住んでいれば車を持たなくても生活できますし、賃貸でもシェアハウスを選ぶなど、憧れや見栄よりも「実」を優先する傾向にあることが分かっています。
こうして社会構造や人々の想いが変わっていくなかで住まいのあり方も変わり、結果的に日本全国に増えているのが、「空き家」の問題です。