新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

中古住宅に高い査定がつくことはない

同じ時期に同じ仕様の家を買った場合でも20年も経過すると、それまでの家の管理内容によって物件の価値は大きく異なってくるはずです。これは住宅に限らずオフィスビルでも商業施設でもホテルでも理屈は同じです。ところが中古住宅では築年数で「一発アウト」これはおかしな話です。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

以前は日本の木造住宅は耐用年数も20年程度といわれ、それは日本の住宅は木と紙でできていて20年以内には建て替えなければならないような劣悪なものが多くあるからだ、とされていました。しかし、現在では木造住宅でも耐久性、耐震性にすぐれ、100年も持つような優良住宅が建てられるようになっています。

 

それでも、築年数が経過した中古住宅に高い査定値がつくことは稀です。

 

中古に価値を与えないということは、住宅の持ち主がいざ市場で売却しようとする際には、「土地代しかあてにならない」ということを意味します。

 

たとえば土地の評価額が50坪で5000万円、つまり坪当たり100万円だったとします。ここに40坪の住宅を3200万円で建設します。坪当たり80万円程度の建設費になりますから、設備仕様は十分な住宅といえます。土地と建物を合わせた費用は8200万円ということになります。

 

ところがこの住宅、20年たっていざ売りに出すと土地代のみが売り値と査定されてしまうのが常です。土地代が10%値上がりしていれば5500万円。ただし建物代はゼロなので中古価格は5500万円にしかなりません。わずか20年の間で2700万円も不動産価値が下がったことになります。ましてや土地代が10%下落してしまうと中古価格は4500万円。そこに建物の価値は一切包含されないのです。

 

これでは、日本人が自らのライフスタイルに合わせて住宅を気軽に買い替えていくことは、至難の技となってしまいます。

 

アメリカ人は人生の中で5、6回は住み替えるといいます。それは中古住宅に価値があると多くの人が信じているからです。テレビ番組でご一緒した米国人タレントは私にこう言いました。

 

「日本人、よく勇気出して新築住宅買うよね。なぜって、アメリカじゃ、まだ誰も住んだことのない住宅なんて怖くて住めないよ」

 

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