急増する所有者不明土地…地域に役立つ土地活用は可能か

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

「放置された土地」が多くの問題を引き起こす

2017年12月、一般財団法人国土計画協会の研究グループ「所有者不明土地問題研究会」(座長・増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授)が発表した最終報告は、日本国内に大量の所有者不明土地があることと、このまま何らの政策を講じずに放置するならば所有者不明土地は増加を続け、やがては北海道全土の土地に匹敵する面積の土地が「所有者不明土地」として多くの問題を引き起こすことを提言し、日本社会に大いなる警鐘を鳴らしました。

 

これまで述べてきたように、不動産は実需に裏打ちされた「役に立つ」不動産もあれば、投資マネーの思惑に翻弄されながら価格の上下動を激しく繰り返していく「金融商品」のような不動産もあります。そして今問題となっているのが、誰も見向きもしなくなった「打ち捨てられた」不動産が世の中に蔓延(はびこ)りだしていることです。

 

放置された所有者不明の土地がいろいろな問題を引き起こす。
放置された所有者不明の土地がいろいろな問題を引き起こす。

 

みんなが関心を持たなくなった不動産は、そのまま「放置」しても大丈夫なのでしょうか。研究会の最終報告では、所有者不明土地の存在が、道路の拡幅など土地収用を伴う公共工事の進行を妨げ、崖崩れ防止のための山肌の修復工事の許可が取れない、震災、津波対策として確保しようとした高台住宅の用地が確保できない、放置された農地や森林の適切な管理ができないなど、多くの支障が生じていることを明らかにしています。

 

そして所有者がわからなくなってしまう原因の多くが、相続の際に「相続登記」がなされずに相続が繰り返されることによって真の所有者が分散して、探索がきわめて困難になることで引き起こされるものであることが指摘されています。

 

登記そのものが単なる「第三者対抗要件」としての効力しか有しないのにもかかわらず、登記にあたっては登録免許税が課税され、司法書士などの手数料を含めて多額の費用がかかることを嫌って、どうでもよい不動産については登記を行なわないことも、所有者不明土地を増加させた要因であるとも指摘されています。

 

研究会では、相続登記を推進するために税の減免や登記自体の義務化、既存制度における手続きの簡素化や各省庁にまたがる情報の一元化などさまざまな改善策を提起しています。

 

私はこうした施策はそれぞれに問題解決のための処方箋になると思っていますが、「そもそも論」として、日本における不動産所有権のあまりの「強さ」をなんとかしたほうがよいのではないかと考えています。

オラガ総研 株式会社 代表取締役

1959年、アメリカ生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年、J-REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在は、オラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』など多数。

著者紹介

連載不動産の動きを観察すれば、日本経済がわかる

不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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牧野 知弘

祥伝社新書

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