高齢となった父親は元経営者。末っ子長男は二代目社長となり、娘たちは父親の庇護のもと、広い実家で自分の配偶者や子どもたちとともに共同生活をしています。将来の相続が心配になった長女が父親に状況を尋ねると、「息子には不動産、娘たちには有価証券と現金」というプランを話してくれましたが、そこにはいずれ解決しなければならない、ある問題をはらんでいました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
とはいえ、姉妹の配偶者や孫たちも気軽に手伝いに参加してくれるため、大きな苦労はありません。ひとつ屋根の下の3家族はにぎやかで楽しい生活を送っています。
結婚を機に実家を離れた三女と長男は、それぞれ別の場所に自分たちで家を建てて暮らしていますが、普段から頻繁に交流があり、なにも問題はありません。
自宅には「別居の長男」の名義が含まれていて…
青木さんは父親が90歳になってから、いずれ起こる相続のことが心配になり、財産のことを尋ねてみました。
父親は渋ることなく、すぐに金庫から財産関係の書類を出してくれましたが、自宅の登記簿を見てみると、土地にも建物にも父親と母親、そして長男の名義が入っているということがわかりました。青木さんの祖父が亡くなったときの相続時に、祖父の養子になっていた母親と長男の名義も入れたそうなのです。
長男は自分で家を建てており、結婚後に両親と同居していた期間もありません。また今後も実家に戻ることははないといいます。相続税のみならず、この家をこれからどうするのかも今後の課題となりそうです。
父の考えは「長男に不動産、3姉妹に現金と有価証券」
青木さんの父親の自宅以外の不動産は、すべて会社が使用しているため、会社を継ぐ長男が相続するものという暗黙の了解があります。青木さんも2人の妹も、それについては異論はありません。
ただしその代わり、それぞれが相続するものを事前に決めておいてもらいたいというのが希望です。もし相続税がかかるのであれば、いくらぐらいなのか目途をつけておき、なおかつ、なるべく節税しておいてもらいたいと考えています。
「父は明るくさばけた性格で、なんでも気軽に話を聞いてくれます。相続が心配だと相談したときも、〈そりゃそうだろうな〉といって、すぐ書類を出してきてくれました」
「父には、私も妹たちもサラリーマン家庭なんだから、そんなに相続税は払えないわよ、ちゃんと対策立てておいてよね…といっているんです。父は、会社の土地は社長(長男のこと)にやらなきゃいかんから、お姉ちゃんたち3人は現ナマと株ではダメかね~、なんて軽口をたたいていましたが…」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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