不動産に対する見方が変わろうとしている
不動産は財産。財産だから価値がある。価値があるのだから値段は高くても当然。これまで多くの人になんとなく刷り込まれてきた不動産に対する見方が今、大きく変わろうとしています。
財産であり、大切なものであるから、その所有権は絶対的なもので他人から侵されてはならない。お金がたまったら財産である不動産を買わなければならない、いや、買わなければ損をする。
日本人が長きにわたって、いわば信仰のように不動産に対して抱き続けてきたこうした固定概念が崩れようとしています。不動産は読んで字のごとく「動かせない」ものでした。だから不動産を所有して、その不動産が持っている効用を最大限引き出していくことが大きな富を生む。人々はそのように考え、不動産を崇(あが)めてきました。
マンションを買えば、自分のマンションが値上がりしているかどうか気になって仕方がない。毎年雑誌で特集される「マンション上がる街、下がる街」が大変売れ行きが良いのも、マンションは資産だ、財産だと思っている人が相変わらず多いことの証左です。
しかし、この信仰を続けるために日本人はどれだけ人生を捧げてきたのでしょうか。この「不確かな世界」で35年もの住宅ローンを組む。返済年齢を80歳までに設定してローン返済を計算する。自分の会社が一生潰れずに元気な状態を保ち続けると信じる。口は悪いですが、「お花畑」の発想にしか見えません。
不動産を所有することが時代の変化において常にリスクヘッジとなるという根拠があれば、ローンを組んででも不動産を所有しておくことは正しい選択といえるでしょう。
しかし今の不動産は、投資マネーに支えられる一部の不動産を除いては、「実需」という最も肝心な要素がきわめて脆弱になっていく中で、その価値を保ち続けることが難しくなっているのです。
一方で考え方を変えてみるとそこにはまたまったく異なる新しい世界が見えてきます。不動産バブルが崩壊して、不動産価格が安くなることで、人々の生活は、人生はどう変わるでしょうか。
不動産を現在所有している人は、不動産に多額のカネを突っ込んだ人もいるでしょうし、不動産を担保にお金を借りている人もいるでしょう。彼らにとって不動産は常に「値上がり」し続けてもらわないと困ってしまうわけです。これは一種の「既得権益」のようなものです。
「地価が上がる」「賃料が上がる」というのは、こうした既得権益を持つ人々からは歓迎されるのです。また地価が下がることは国力の衰退などといって、政府に改善を求めたりするのです。