新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

外の世界の刺激を得ることで街は活性化

街も人間の体と同じく「新陳代謝」が必要であるのは、このことが理由です。

 

人が三世代に跨ることで、常に街には若者がいて高齢者がいる。さまざまなコミュニティーが形成されて、そこに文化や芸術が生まれる。この好循環を街としていかに創出していくかが問われているのです。そしてこの三世代が何回転かするうちに、その街は街らしく機能し始めるのです。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

最近ではこれに外国人も加えてよいかもしれません。外国人が住むのは嫌だとステレオタイプな拒絶反応を示す向きもありますが、外国人とのコミュニケーションもまた新しい文化を生み出す素となります。

 

また街の中に「職」の環境が整備されていれば、街の昼間人口が維持されます。住民が日中まったく姿を消してしまうような街では、活力は生まれません。他所から街に人が出入りすることによって、常に「外」の世界と触れ合い、刺激を得ることで街は活性化します。また、そこに出入りする人も含めて「商」が入ってきます。

 

人が出入りすることで、新しい流行やトレンドに敏感になるために「商」も新陳代謝を繰り返し始めます。

 

こうした関係を作り出すことができれば、郊外であっても人が集まり、が集まる ことによって不動産も活性化されます。ということは、不動産価値が保たれ、上昇することになります。

 

ただし、この世界には投資マネーはまずやってはきません。あくまでも需給バランスによって成り立つ不動産価格のみが形成されているからです。日本は昔と違って人口が爆発的に増加するわけでもありませんし、鉄道が開通して沿線の住宅需要が一気に顕在化するなどといった「昔の方程式」はそもそも成立しなくなっています。

 

しかし、これこそが本当の不動産価値ともいえるものなのかもしれません。バブルとは無縁の値上がりを享受することを狙って投資をしてみるのも、正しい投資といえるのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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牧野 知弘

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